三菱電機が打破狙う「縦割り内向き」の組織風土 「事業本部」を横断運用し経営資源を最適に配分
2023年度に入ってからは、ビジネスエリア間で横串を刺す動きが加速している。
今までの三菱電機では、収益性の高い事業本部であれば、次なる成長に向けて多くの資金を投入できた。だが独立性が高くなった結果、収益性の低い事業本部では投資の原資が限られていた。
こうした壁を破り、全社的な視点から経営資源をどう投入すべきか、ビジネスエリアオーナーをはじめ経営陣は毎週のように集まって戦略を練っている。これまでであれば原資が少なく投資できる規模が小さかった事業本部でも、将来的な必要性などが認められれば、より大規模な投資ができるようになった。
全社を俯瞰して投資が決定されるようになった事業本部はすでにある。パワー半導体などを手がける半導体・デバイス事業本部だ。2022年度はビジネス・プラットフォームのビジネスエリアの一部にすぎなかったが、2023年度から社長直轄組織にもなった。
電圧の調整や電力の変換に用いられるパワー半導体は、三菱電機の多くの事業で使用される。「半導体にどれくらい投資すべきかなど、全社を俯瞰した議論を加速するフェーズに来ている」(加賀専務)。
硬直的だった人事でも変化が起きている。2023年4月、FA機器の主要工場である名古屋製作所(愛知県名古屋市)の所長が、ビジネスエリアを飛び越えて鉄道関連の製品を製造する伊丹製作所(兵庫県尼崎市)の所長に就任した。
「稼ぎ頭である名古屋製作所のノウハウ注入を狙う」。異動の理由はシンプルながら、同社ではこれまでだとありえなかった人事だ。事業本部どころか工場をまたぐ異動すら限定的だったからだ。
目指すは「コングロマリットプレミアム」
三菱電機が目指すのは、幅広い事業で培われた技術を組み合わせてシナジーを生む「コングロマリットプレミアム」の創出だ。
2003年、DRAM事業をエルピーダメモリへ、半導体システムLSIをルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)へと次々と切り離す一方で、パワー半導体事業を社内に残した理由もそこにある。
FA機器やエレベーターなど他事業でも多く使われ、強みのある製品を社内に残すことが、幅広い事業の競争力にもつながってきた。社内の異なる事業本部にユーザーがいて、ユーザーと技術を組み合わせることで、独自の強みを生み出してきた。
そういう意味では、三菱電機は以前より、コングロマリットプレミアムを生むことを目指していたともいえる。ただ、開発段階から技術者が交流するといった取り組みが徐々に少なくなっていた面は否めない。
不正の再発防止を図りつつ、事業の成長につなげるために必要となる全社に横串を刺す取り組み。三菱電機の組織風土改革は緒に就いたばかりだ。
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