「21世紀の貴族制」を正当化する現代の「聖職者」 シリコンバレーで進む「新しい封建制」の惨状
確かに、環境保護主義者が示す地球環境の破滅の未来は、キリスト教における「最後の審判」の預言を彷彿とさせる。コトキンは、現代の環境保護主義を「グリーン宗教」とまで言う。
次の引用は、マルティン・ルターが教会の門扉に貼りだし、宗教改革の引き金を引いたとされる文書「95か条の論題」になぞらえては大げさだろうが、グリーン宗教の信者が目を覚まさずとも、そむけたくなるような辛辣な一節である。
この環境保護運動を支持する超富裕層の偽善ぶりは、現代の時代精神を特徴づけるもののように思われる。類似の分析としては、本書の数カ月前に邦訳が刊行されたカール・ローズ『WOKE CAPITALISM─「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』があるので、参考にされたい。
現代の「聖職者」となった「有識者」とは何か
本書の中でも特に秀逸だと思うのは、第Ⅲ部における「有識者」の分析である。支配体制を維持するには、それを正当化する論理を提供する「正当性付与者」が必要である。中世の封建制においては、聖職者がその役割を果たした。
しかし、近代に入り、宗教の衰退とともに聖職者の正当化者としての役割は低下し、代わって、大学教授、科学者、公共知識人などのいわゆる「有識者」が「正当性付与者」となっていった。
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