「21世紀の貴族制」を正当化する現代の「聖職者」 シリコンバレーで進む「新しい封建制」の惨状
この「有識者」について、コトキンは、より広く、教師、コンサルタント、弁護士、政府官僚、医療従事者、ジャーナリスト、芸術家、俳優など、物質的生産以外の仕事に従事する者を含めている。
現代社会は複雑であり、その運営には高度な専門的知識を要する。一般市民の政治参加、すなわち民主主義ではうまくいかない。高度な知識を有するエリートである「有識者」による支配のほうがうまくいく。このような論調がある。しかし、現代の「有識者」が実際に行っているのは、次のようにして、現支配体制を正当化することなのである。
支配体制を正当化する役割を果たす「有識者」
最近、我が国でも、「いま私たちがなすべきは、富と機会を拡大する方法を模索することではなく、社会的不満の解消や環境保護くらいのものだという悲観的な思い」を率直に表現するようなインテリたちが台頭しつつある。彼らは、権威や体制に反抗しているように見えるのだが、実際のところは、コトキンの言う「有識者」として、支配体制を正当化する役割を果たしてしまっているのかもしれない。
コトキンは、「新しい封建制がやってくるのをなんとか遅らせ、できれば押し戻さなければならない」と訴える。彼は、保守反動に分類されるような論者ではない。しかし、時代の流れが劣化に向かっているのだから、その流れに逆行する「反動」こそがむしろ進歩だというわけである。このような力強い表現は、「長いものには巻かれろ」「バスに乗り遅れるな」といった調子で、時代の流れや大勢に追従するのを旨としてきた現代の日本人からは、まず出てこないものであろう。
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