「意識高い系」資本主義が「賃金UP」を抑えている訳 企業が「SDGs」や社会正義に取り組む本当の理由
近年「WOKE」という言葉がよく使われている。「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生したこの言葉は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。たとえば、一般消費者向け企業が、気候変動、銃規制、人種平等などに参加する様子は「Woke Capitalism」と呼ばれる。このほど上梓された『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』で、著者のカール・ローズ教授は、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と問題点を描いている。
私たちはこの状況をいかに読み解くべきか。同書に寄せられた評論家の中野剛志氏による解説を一部編集の上、お届けする。
「ウォーク」と「意識高い系」
シドニー工科大学で企業倫理を専門とするカール・ローズ教授が書いた『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』は、社会哲学に深く根を下ろしつつ、タイムリーな具体的事例を数多く挙げながら、現在進行中の資本主義の病理を見事に暴き出している。
マスメディアから流れて来る表面的なニュースの裏に、かくも深刻な病巣が隠れていようとは、普通は気が付かないだろう。それだけに、読者の多くは、かなりの衝撃を受け、思わず論争に参加したくなるはずだ。
本書が「ウォーク資本主義」と名付ける現代資本主義の症例のほとんどは、アメリカやオーストラリアのものであるが、もちろん、日本にも大いに関係している。読者は、日本の資本主義における「ウォーク」化の事例を探してみるとよいだろう。
改めて、「ウォーク(woke)」とは、「目を覚ます」ことを意味する。1960年代頃のアメリカで、黒人たちの間でよく使われたスラングだったらしい。その「ウォーク」というスラングが、今日では、別の意味を帯びて復活してきたのだという。
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