「広瀬香美」デビュー30周年、訪れた予想外の転機 「本気で向き合った」番組で見せた"別の顔"

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広瀬さんは、これまで歌手として数々のオーディションを受け、たくさん受かってもきたが、たくさん落ちてもきた。受かったときのことはあまり覚えておらず、むしろ落ちたときこそ、その理由を考え、結果をバネにして成長してきたと言う。

最終ステージの様子(写真:Hulu)

最終審査を通過した候補だけではなく、悔しい思いをした候補が、いつか歌姫になって広瀬さんの目の前に現れる日が来るかもしれない。

世界で輝く歌姫を育てる

実は、広瀬さんと栗原さんにとって、番組を完成させることがゴールではない。2人の真の野望、それは、この企画から世界に通用する歌姫を生み出すことだ。広瀬さんは、現在日本とアメリカ、半々で2拠点生活を送っているが、これから海外の仕事の比率を高めていきたいと考えている。

一方、栗原さんは、世界中に輸出されるお手本番組を生み出した存在だ。その栗原さんと手を組んだ広瀬さんは、海外展開に向けてこう語る。

「例えば、日本では、ステージでうまく歌えないと、よくイヤーモニターのせいにする人がいます。でも、私の教え子たちには、それを絶対に許しません。

海外のアーティストは、イヤモニがなくても普通に歌います。海外の過酷さや世界のスターのレベルの高さを日本はまだまだ知らないなと思いますし、環境や人のせいにばかりしていると、日本のエンタメがどんどん遅れていってしまいます。

そんな中、今回私が選んだ歌姫は、歌声に関して世界で通用する素材を持っていると確信しています。本人が志を持って努力を積み重ねていけば、十分世界で活躍できる可能性があると思っています」

最後に、世界に向けて初めてタッグを組んだお互いの感想を、広瀬さん、栗原さんに聞いた。

「後で気づいたのですが、栗原さんの中には大きな球体のようなものがあるんですよ。その半径から私がはみ出さないかを見守っている。『広瀬さん、自由にやっていただいていいですよ』って言うから、私は自由に動いたんです。

でもね、栗原さんは、あっちまで行ったら、こう編集しようとか、経験からありとあらゆる計算をしていたんだと思いました。私が最終的に通過者は1人もいないと言おうが、AKB48のようなグループをつくりたいと言おうが、すべて栗原さんの想定内だったんだと。

次は、『自由にやってください』って言われたら、もっと暴れちゃうよ!えええーーーっ!っていうところまではみ出しちゃうよ!(笑)」

(撮影:谷川真紀子)

栗原さんが応える。

「問題ないですよ。何が起きても大丈夫なように考えてるんで(笑)。前々からお会いしていて、広瀬さんのことをわかったうえで企画しています。それでも、今回は想像をはるかに超えて、本物感がすごかったです。

やっぱりプロって、すごいなと思いました。ぼくは、プロが好きで、その道を極めてきた人って、やっぱり何かが違いますよね。番組をきっかけに、それを垣間見たかったんです。広瀬さんがどうやって成功し、どうやって30年やってきたのかがオーディションの随所に出ている番組がつくれたと思います」

広瀬香美と栗原甚。2人の世界タッグが、どのような歌姫を世界に送り出すことになるのか。今から楽しみでならない。

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川下 和彦 クリエイティブディレクター/習慣化エバンジェリスト

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かわした かずひこ / Kazuhiko Kawasita

2000年、慶應義塾大学大学院修士課程終了後、総合広告会社に入社。マーケティング、PR、広告制作など、多岐にわたるクリエイティブ業務を経験。2017年春より、新しい事業を創造し、成長させることを標榜するスタートアップ・スタジオに兼務出向。広告クリエイティブに留まらず、イノベーション創出に取り組んでいる。著書に『コネ持ち父さん コネなし父さん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ざんねんな努力』(アスコム)などがある。(撮影:原貴彦)

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