ずっと広瀬さんの側で、オーディションの一部始終を観てきた栗原さんは、その様子を振り返ってこう語る。
「ぼくが合格すると思った人は、ことごとく誰も通過しませんでした(笑)。素人は声量や器用さで合格かなと思ってしまいますが、やっぱり見ているところが違うわけですよ、プロは。
ぼくは、いつもプロの覚悟や本気を撮りたいと思っているのですが、今回は広瀬さんの本気と歌姫候補たちの本気がぶつかり合って、涙を流す人も出るくらい、大きな化学反応が起きていたように思います」
このオーディションがきっかけとなって、この先何十年も広瀬さんのように活躍する歌姫が生まれるかもしれない。そうなったとき、広瀬さんも言うように、『歌姫ファイトクラブ!!』は、そのデビューまでの軌跡を振り返るたびに視聴される番組になるだろう。
原石が輝くダイヤになるために
立ちはだかる難関を突破して最終審査にたどり着いたのは、どのような歌姫候補だったのだろうか。
「残ったメンバーは、みんな何かしら私の心を奪い、もう一度聴きたいと思わせてくれる声を持っていたのは確かです。最終選考の舞台となった私のライブで、1人ひとりに課題曲を歌ってもらった後、悩みに悩みましたが、最後は自分の直感を信じて『この声をプロデュースしてみたい!』という候補を選びました」
しかし、どんなにすばらしい素質を持っていても、原石が原石のまま終わってしまうことも少なくない。選ばれた歌姫候補に対して、すでに真の歌姫になるためのレッスンが始まっているという。
「本物の歌姫になるために努力できるかどうかは、今見ています。どんなにセンスや資質があっても、コツコツ努力しないと、作品はいいものになっていきません。ですから、やはり練習量が重要になりますし、日頃から自分の魅力を追求することや、自己研鑽を積み重ねることが、プロとして活動を続けていくうえで必要不可欠だと思っています」
今回広瀬さんのお話しをうかがっていて興味深かったのは、オーディションを通過できなかった候補からも歌姫が生まれる可能性があるということだ。
「最終選考の手前で落ちてしまった子がいます。私の大好きな歌声で、この子は通したいと思っていました。でも、発声法がよくなくて、声を壊すような歌い方をしていました。
その結果、審査当日に体調を崩してしまい、会場に来てくれたのですが、私が歌わせなかったんです。すごく葛藤があったのですが、涙をのんで落としました。
あの声はなかなかないし、根性もあるし、彼女が持っているバックグラウンドは、私にはない層に突き刺さると感じたので、あの子はいけるんじゃないかと思います。読んでくれていたら、DMをくれるといいのになあ」
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