そうしたおじさんが若者だった頃の1999年の産経新聞の記事によれば、その年の新成人に対して「理想のデート費用の払い方」についてアンケートしていますが、「7割が割り勘」と回答しています。
1997年のタイガー魔法瓶が実施した「独身サラリーマンとOLの財布の中身」調査(対象20~39歳)では、デート費用を「自分が全部出す」男の割合は24.6%にとどまります。つまり、昔も今も若者は割り勘が当たり前なのです。
「男女対等意識で割り勘になった」わけではない
私のラボの調査によると、むしろ年齢より年収の影響のほうが大きい。年収別にみれば、年収が高くなればなるほど「男がおごるべき」意識も高まります。全体では30%程度であるものが、年収500万円以上だと50%を超えます。
要するに、「男がおごるべき」という意識というのは「自分の経済力」と連動するものであり、最近の若者の「男女対等意識があがったから割り勘になった」というより、単に無い袖は振れないだけのことかもしれないのです。同年代の女性もそれを理解しているわけで、だからこそ「男がおごるのが当たり前」などと思っている割合が少ないのでしょう。
ご存じの通り、特に20代の男性はここ25年間も給料があがらない状態が続いています。2022年の最新の就業構造基本調査で計算してみても、全国20代の未婚男性の年収中央値は297万円でしかありません。
本来、未婚男性が結婚を決断できる最低年収ラインといわれる「300万円の壁」ですらおよそ半数が超えられていません。さらに、近年は税金や社会保険料負担も増えていて、可処分所得はむしろ減る一方です。
そんな経済環境の中で、一部の限られた層の狭い世界でやられている「男全おごりという港区しぐさ」をすべての男性に求めるのは無理があります。
「私はおごられる女」「俺はおごれる男」ということで承認欲求を満足させたいのならそれはそれで結構ですが、金銭の授受がなければ満足できない承認欲求と人との関係性しか持ちえないのなら、それもずいぶんと寂しい話だと思います。
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