「安易な脱炭素宣言」は、社会から批判を浴びる カーボンクレジット活用上の留意点【前編】

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この科学的な現実を前に、地球全体で見ると、削減につながらない質の悪いカーボンクレジットによるオフセットは、2030年に向かってはむしろ害になる。だからこそ、クレジットに対して厳しい目が注がれるのだ。

クレジットの中でも、CO2を吸収する森林由来のクレジットが日本企業に人気だが、これを自らの化石燃料エネルギー由来の排出量のオフセットに使うことは最も批判を受けやすい。

なぜなら、熱帯雨林の破壊を減少させるクレジットにしても新規植林クレジットにしても、それらは化石燃料からのCO2排出の削減にはまったくつながらないからだ。

国連のグテーレス事務局長が主導する専門家グループは2022年11月に、温室効果ガス排出ネットゼロを掲げる企業が守るべき10の条件を提示した。その中の1つとして、2030年などの短中期の目標達成にはクレジットによるオフセットは使うべきではないと明言している。この考え方は国際的なスタンダードなのだ。

真の脱炭素の取り組みは自ら半減させること

それでは企業は真の脱炭素の取り組みをどのように進めるべきか。企業はまず省エネルギーの推進や再生可能エネルギーなどへの転換によって、2030年に向かって自らの努力で排出量を科学的に半減させていくことが一丁目一番地である。

特に温室効果ガスの約90%が化石燃料エネルギー由来である日本においては、エネルギー由来の排出量を半減させていくことが、パリ協定に最も沿った取り組みとなる。森林由来のクレジットでごまかしてはいけないのだ。

欧米のグリーンウォッシュ規制も、国連のネットゼロ提言をはじめとする脱炭素の国際イニシアティブも、要求していることは基本的に同じ。まずは科学に基づいて、自らの排出を自助努力で2030年までに半減することである。

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