「ブルーライトカット眼鏡」に頼る人が知らぬ盲点 子どもの使用は「推奨しない」とする学会声明も

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この「近距離でものを見る」問題は、ここ数十年で、ますます深刻になってきています。言うまでもないでしょうが、スマートフォンやタブレットが浸透したことで、人々は、より長時間、近くでものを見るようになってしまいました。こうしたデジタルデバイスがなかったころは、「近くでものを見る」といえば、せいぜい本や新聞といった紙媒体くらいのものでした。

また、パソコンはデジタルデバイスですが、過度な光の刺激は目によくないとはいえ、モニターに顔を近づけて見ることはあまりないでしょう。

やはりスマートフォン、タブレットという「手元で操作するデジタルデバイス」の普及が、現代人の目にとって、いっそう過酷な環境を作り出していることは確かなのです。

しかも、読書の際の目と本の距離は、一般的に約30センチメートルであるのに対し、スマートフォンと目の距離は約20センチメートルと、より近くで見るようになってしまっています。実際、スマートフォンを30分間見続けると、眼圧がみるみる上昇してくるという研究もあるほどですから、やはりスマートフォンやタブレットの扱いには特に注意が必要です。

電子書籍の是非は「読むデバイス」次第

よく患者さんなどから「目の健康のためには、やはり紙の本を読むのが一番いいのか? 1台で事足りるiPadなどのタブレットや、Kindle Paperwhiteや楽天Koboなど電子書籍用タブレットはダメなのか?」と聞かれます。

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今までの話からすると、デジタルデバイスで読書をしてはいけないと思われるでしょうが、実は、どれが最も近視を進行させるのかという明確なデータはありません。

ただ、デジタルデバイスが発する強い光はまばたきの回数を減らし、目を非常に疲れさせます。人は生来、点滅しているものを凝視するようにできているからです。目が疲れにくいという点では、やはりタブレットよりも紙媒体がいいでしょう。

実はKindle Paperwhiteや楽天Koboなど電子書籍用タブレットも、紙媒体と同様です。見た目は似ていますが、電子書籍用タブレットは通常のタブレットと違って、それ自体は光を発していません。

簡単に言うと、電子書籍用タブレットは周囲の光を反射して文字が読めるようになっており、いわば本物の紙に近いのです。したがって目の疲れにくさも、紙の本と同等と考えてかまいません。目が疲れにくいというのは、それだけ速く読めるし、読み続けられるということでもあります(長時間、連続して読書するのはおすすめしませんが)。そもそもデジタルデバイスを凝視することは、自覚はなくても動いている光を目で必死に追いかけるようなものです。それだけ頭のリソースも食うということですから、デジタルデバイスだと読書速度はぐんと落ちるはずなのです。

つまり効率的にも紙の本、もしくは電子書籍用タブレットで読むのがベストな選択といえます。

平松 類 眼科医/医学博士

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ひらまつ るい / Rui Hiramatsu

愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。現在、昭和大学兼任講師、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長、三友堂病院非常勤医師・眼科専門医・緑内障手術機器トラベクトーム指導医として勤務している。延べ10万人以上の老人と接してきており、老人患者が多い病院の眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事し、シニア世代の新しい生き方を提唱する新老人の会の会員でもある。専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。

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