「ブルーライトカット眼鏡」に頼る人が知らぬ盲点 子どもの使用は「推奨しない」とする学会声明も

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ブルーライトが目にダメージを与える可能性は長く指摘されてきたとはいえ、実は、具体的にどんなダメージを与えるのかはいまだに判然としていません。一つ考えられるのは、ルテインが加齢と共に低下することで、ブルーライトの青色のダメージを受けやすくなることです。

ルテインは、見ているものの色彩や形をハッキリ捉える機能を果たしている「黄斑」に必要な成分であり、「天然のサングラス」とも呼ばれています。それが加齢と共に減少すると、ブルーライトの悪影響を受けやすくなる可能性があります。この可能性をとるならば、40代以降のブルーライトカットメガネの使用は、青色のダメージから多少は目を守る効果が期待できる……かもしれないという程度にすぎません。

実はブルーライトカットメガネの使用群と不使用群とでは、目の健康度に有意差が見られなかったという臨床実験もあり、やはり、まだまだ判断がつきかねるというのが現状なのです。

本当にブルーライトを危惧するのなら、デジタルデバイスの使用時間を区切る、デジタルデトックスの日を定期的に設ける、デジタルデバイスの画面からの距離をしっかり確保するといった対策のほうが、よほど効果的といえます。

ちなみに「ブルーライトカット」をうたうフィルムをパソコンやスマートフォンのモニターに貼る、夜はスマートフォンを「ナイトモード」にするなどの対策は、まったく無意味とはいいませんが「気休め」程度と考えてください。

これらの対策をとっているからといって、休憩を入れずにパソコンを使い続けたり、真夜中までスマートフォンを見続けていいわけではありません。現に、ある調査機関が行った「iPhoneのナイトモード」の実証実験では、「有意差(効果)はなし」という結果が出ています。

ブルーライトカットメガネの唯一の効能とは?

現時点で唯一、ブルーライトカットメガネのメリットとして挙げられるのは、睡眠の質の改善です。

人間は古来、自然光に従って生活リズムをつくってきました。簡単にいえば、朝に目覚めるのは太陽が昇って日光が部屋に入るからですし、夜に眠くなるのは太陽が沈んで日光が途絶えるからです。

ところが現代人は、自然光以外にもさまざまな光に囲まれて暮らしています。本来、夜は日光が途絶えて眠くなるはずなのに、部屋に明かりを灯し、パソコンやスマートフォンを延々と見ている。特に強いのは青い光の刺激です。

そこにブルーライトカットメガネを取り入れてあげると、青い光の刺激が軽減され、自然な眠気が起こってスムーズに入眠、質のよい睡眠が得られると考えられるのです。

仕事が終わり、家でリラックスタイムを過ごすときに、ブルーライトカットメガネをかける。今のところは、これがブルーライトカットメガネの一番の有効利用法といえそうです。

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