ちなみに、『CSR企業総覧(ESG編)』2023年版によると、パソナグループはすでに制度を廃止しており、三菱マテリアルは顧問数3人のみ。高砂熱学工業は顧問数3人のみ、ヤマダホールディングスは顧問数10人のみと、鹿島以外は大幅に減っている。上位100社までの相談役数・顧問数合計は同誌2019年版では957人だったが、同誌2023年版では831人に減少した。
相談役・顧問の知識・経験に期待
次に上位5社について個別に見てみよう。1位は医薬品卸で国内首位のアルフレッサ ホールディングス。45人はすべて顧問で相談役はいない(国内連結子会社14社のデータ)。同社の制度導入の目的は、会社の諮問に対する提案を得ることだとしているが、顧問からの経営上の知見や人脈などに基づく意見・情報を経営に反映できるというメリットを享受している。
2位は航空測量業界3位のアジア航測。同社も21人はすべて顧問で相談役はいない。顧問による現経営陣へのアドバイスや対外活動を導入の目的としているが、顧問から経営陣の意思決定に適切なアドバスを与えられているという。
3位は上下水処理などの水環境事業、化学向けなどの産業プラント・機器を2本柱とする月島ホールディングス(調査時点では月島機械)。同社も20人はすべて顧問で相談役はおらず、談役数・顧問数合計は取締役数の2倍を超える。制度導入目的は、顧問から現経営陣へのアドバイスを受けられることとしているが、顧問も自らの経験に立脚した多くの知見により経営陣への適切なアドバイスを逐次行っているという。
4位は印刷インキ国内首位の東洋インキSCホールディングス。同社は相談役1人、顧問17人の体制だ。相談役・顧問の能力・知見の有効活用を制度導入の目的に挙げているが、役員退任者や定年退職者の能力・知見が、業界の発展や会社の業績に貢献できると判断している。
5位は移動式の建設用クレーンで世界最大手級のタダノ。同社は17人すべて顧問で相談役はいない。制度導入目的として、顧問による経営陣へのアドバイスを挙げており、経営や事業成長のための補佐や指導、アドバイスを通じて事業計画や人材戦略など、中長期的な貢献を期待している。
同じく5位は最大手ゼネコンの一角である鹿島。同社は相談役2人、顧問15人の体制だ。同社は制度導入目的として、相談役・顧問による対外活動を挙げるほか、後任への引き継ぎなどのため必要な措置であると考えている。
ほかの上位企業の中には、「現職においてニーズがあるため」「法律・税務・技術関連のアドバイス等」を制度導入目的として挙げているケースがある。いずれにしろ、就任する相談役・顧問の知識や経験を現経営に生かしたいというニーズは共通しているように思われる。
そして、相談・顧問制度廃止が大きく進展していないのは、上記の企業事例からもわかるように、廃止するよりも同制度の活用によって享受できるメリットのほうが大きいと考えている企業が少なくないからのようだ。
ますます先が読めない時代であるから、経営陣は難しい経営判断を迫られる場面は少なくないだろう。それゆえに経験豊富な相談役・顧問からのアドバイスの重要度が増すように思われる一方で、コーポレートガバナンスの観点からの従来の経営体制の見直しも進んでいくだろう。
【2023年10月16日17時10分追記】相談役数・顧問数合計に関する一部記述を上記のように修正しました。
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