真由子さんとの結婚生活の継続をあきらめた敏弘さんは自分一人でアパートに住み始め、調停を申し出て離婚。その後、別の地域で中古住宅を購入し、久美さんと出会うまでの3年間を過ごした。小学校4年生になった息子とは月1回は面会できているし、養育費も支払い続けている。
「再婚を考え始めたのはコロナがきっかけです。ワクチンを打ったら体調がすごく悪くなってしまい、こういうときに誰もそばにいてくれないのはつらいなと思いました」
今度は、保険の外交員に誘われて大手の結婚相談所に登録した。久美さんも副業として加盟していた相談所である。
自分を低く見積もる敏弘さんはレアだった
当時の敏弘さんは40代後半で年収800万円の公務員。見た目も爽やか。離婚歴があって子どもの養育費を払っているとはいえ、婚活の場では売り手市場と言えるだろう。しかし、前の結婚で苦しんだ本人はそのような自覚はなく、「こんな私でよければどなたでもお願いします。できれば、明るくて前向きで小柄な女性がいいけれど」という程度の希望条件だった。
たいていの人は「自分なんて」と言いながらも、自分の市場価値を無意識に高く見積もっているものだ。その間違った見積もりに釣り合う相手を見つけようとするので、出会いは多くても成果には結びつかない。自分を低く見積もる敏弘さんのような人はかなりのレアケースである。
目ざとい久美さんが見逃すはずはない。「前向きで小柄なら私です!」とアプローチをして、敏弘さんをさっさと婚活市場から退場させた。個人で不動産の売り買いもしている久美さんにすれば、「超お買い得物件」だったのだ。
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