大人になっても、自分が子どものころに虐待を受けたとは思わない人が多い。その結果、今度は大人の自分が虐待をしていてもわからないかもしれないのだ。
「怒りっぽい親」という言葉に隠された真実
子どものころに受けた虐待について、淡々と話してくれた中年男性がいる。彼は、それがどんなにひどいことだったかをまるで理解していなかった。
たとえば、尿失禁をするほど父親に首を絞められたあげく、地下室に閉じこめられたそうだ。父親がステレオを投げつけたことを思い出しながら、彼は静かにこう言った。
「父は怒りっぽかったのかもしれませんね」
精神的に未熟な親は、心を砕くことができたとしてもやらない。子どもが精神的な支えを求めると、いつにもまして非協力的になる。
子どもが傷ついたり仲間はずれにされたりしても、無視するだろう。子どもが学校でつらい思いをしていても心を寄せようとはせず、いい加減なアドバイスをするだけだ。いずれ子どもは、「自分の心が傷ついても、親は手を差し伸べてくれることはないのだ」と悟る。
なかには、子どものころにとてもつらい経験をしてきたが、自身の子どもとの関係は安定しているという人もいた。そういう親は、じっくりと時間をかけて自分の経験について考え、自分の中できちんと消化してきたので、過去の楽しい思い出もつらい思い出もありのままに受け止めていた。
その子どもが安定した愛着を示すのは想像にかたくない。彼らの親は、現実から逃げずに自分の過去としっかりと向き合ってきた。だから、子どもとしっかりつながり、安定した愛着を形成することができたのだ。
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