子どものころ、怖くなると決まって自力でそれを乗り越えなければならなかったという女性がいる。助けてもらった記憶はあるかと尋ねると、彼女はこう言った。
「誰かに自分のことをわかってもらえたら素敵でしょうけど、そんなこと一度もありません。怖い思いをしたときに、助けてもらった記憶なんてないんです。通りいっぺんのことを言われただけです。『大丈夫よ』とか『そのうち平気になるって』とか『じきによくなるから』とか」
子どものころにネグレクトされた人の多くは、「否応なしに自立した」と気づいていない。このことを患者はさまざまに表現している。
「ずっと、自分の面倒は自分で見てきました」
「自分のことくらいなんとかできます。誰かに頼りたくないんです」
「自分ひとりでできるはずです。悩んでるところを見せちゃだめなんです」
自分の経験を受け止め負の連鎖を止める
悲しいことに彼らは、大人になってかんたんに助けを求められるようになっても、どう頼めばいいのかがわからない。そのため「助けを求めることは悪いことではない」と認識し、きちんと受け入れられるよう、専門家に治療してもらう必要が生じてくる。
このタイプは何か問題があるとその原因を自分に求めるので、日ごろから虐待を虐待と認識しないことがある。親が自分の行為を虐待と見なさなければ、子どももそうする。
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