米国は東アジア重視に転換、大震災が日米関係を後押し
アジア重視へ戦略見直し
オバマ政権が誕生した背景には、国際社会での米国の立場が危険なまでに悪化していると多くの米外交関係者が危機感を抱いたことがある。
つまり米国は、イラクとアフガンで疑問の多い地上戦に深入りし、国力と威信を衰えさせた。同時に、中国が歴史的な経済的・軍事的台頭を見せるアジア地域に対し、時間と精力と資源の戦略的投入を怠った。
オバマ政権は、東アジアでの米国の役割をあらためて明確化させることを目指す。そのため、この地域におけるオープンで透明な経済・安全保障協力体制の構築を促進し、中国も応じざるをえない条件を示そうとしている。
経済で目下の懸案は環太平洋経済連携協定(TPP)だ。また安全保障では、従来の2国間同盟を基礎に、インド、ベトナム、インドネシアからオーストラリア、韓国、日本までを含んだ、重なり合う多国間安全保障協力関係のネットワーク構築も視野に入れている。
日本はすでに、インド、ベトナムと安全保障関係を育て、対韓関係も深化させているが、それには情報の共有化や軍事物資・役務の融通に関する協定の協議も含まれる。米国は、日本のこれらの取り組みを、日米同盟の影響力を増すものとして支持し、日米の同盟関係では、日本に最大限の自己決定権を認めている。
こうしたプロセスを米国サイドから見てみよう。オバマ大統領は、信用の置けるアドバイザーであるマーク・リッパート氏をアジア太平洋問題担当の国防次官補に任命する予定だ。リッパート氏は、トム・ドニロン国家安全保障担当補佐官、カート・キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)、ミシェル・フロノイ国防次官政策担当と歩調を合わせ、オバマ政権内で「アジア重視への方向転換」を強く主張するだろう。