DNAをズタズタに傷つけられ「半殺し」にされたがん細胞は、腫瘍に戻された後も免疫細胞に自らの「介錯」を求める信号を発し続けます。免疫細胞は半殺しになったがん細胞だけでなく「腫瘍全体を介錯の対象」と認識して攻撃を始めます。これが、「半殺し」にしたがん細胞を戻す治療法のメカニズムです。
しかし、半殺しにしたがん細胞をマウス体内の腫瘍本体に戻すだけでは、治療効果がありません。免疫療法によって免疫細胞の力が十分に高まってブーストされた状態でなければ、半殺しにされたがん細胞の「介錯」信号を、免疫細胞が感知できないことがわかりました。つまりこの方法は、他の抗がん治療との併用が望ましいということになります。
がん細胞を「半殺し」にしてワクチンに
この研究成果は、DNAを損傷させたがん細胞を腫瘍に移植することで、免疫療法の成功率が上げられることを示しました。それはつまり、半殺しにされたがん細胞は、ワクチンとして働く可能性もあるということです。
研究者たちは、この方法でがんが完治したマウスに、数カ月後にがん細胞を移植しました。するとマウスの免疫細胞は侵入してきたがん細胞を認識して攻撃し、新しい腫瘍ができなかったのです。