そのうえで、「国による規制を含め、対策を真剣に考える時期に来ています。場合によっては、肥満・肥満症の関連学会と美容医療の学会などが対話の機会をもつことも必要かもしれません」とする。
「薬局で買える肥満治療薬」も登場へ
肥満を巡っては、別の薬も国から承認され、発売準備が進んでいる。大正製薬の「オルリスタット(アライ)」という商品だ。医師の処方箋なしに薬局で購入できるが、薬剤師が管理をしなければならない。
オルリスタットがセマグルチドと異なるのは減量のメカニズム。オルリスタットは食事に含まれる脂肪の吸収を抑えるという作用がある。
効果に関して海外の臨床試験(国内の承認投与量と異なる)をまとめると、開始から1年で偽薬よりもさらに2.9kgの体重減少が認められた。
肥満症の治療に使うのがセマグルチドで、蓄積した内臓脂肪のセルフケアに用いるのがオルリスタットといえる。
ほかにも、国内で開発中の医療用肥満症治療薬が複数あり、2024年以降、肥満症や肥満の薬物療法を巡る動きが相次ぎそうだ。
横手医師は「まずは生活習慣を見つめ、改善によって解決できるかを考えてほしい。それでも効果が不十分な場合に、薬がサポートする時代になる」と展望する。
薬が使えるようになるのを待ちたい気持ちもわかるが、内臓脂肪の蓄積による健康問題はすでに始まっているかもしれない。対策を講じるのは早ければ早いほうがいい。
今日はいつものエスカレーターではなく、階段を上ってみますか。
(取材・文/佐賀 健)
横手幸太郎医師
日本肥満学会理事長。1988年、千葉大学医学部卒業、同第二内科入局。2009年、千葉大学大学院細胞治療内科学講座(旧第二内科)教授。2019年、研究領域名変更に伴い、内分泌代謝・血液・老年内科学教授。2020年からは千葉大学医学部附属病院の病院長、千葉大学副学長も務める。
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