肥満で「やせるべき人」「やせなくてOKな人」の違い 販売準備中、2つの「肥満治療薬」はどう使うか

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肥満症治療薬で代表的なのが、セマグルチド注射剤(ウゴービ)だ。この薬は、デンマークに本社を置く製薬企業、ノボ ノルディスク ファーマが開発し、すでにアメリカなどでは肥満症治療に使用されている。日本でも今年3月に医療用医薬品として厚生労働省から製造販売承認が下りた。

今はまだ肥満症の治療薬としては保険診療では使えず、発売を待っている状態だ。

週1回の注射で体重が14%減

日本と韓国で行われた臨床試験では、週1回の自己注射を68週間続けると、開始前に86.9kgだった体重が75.1kgに減少(同剤2.4mgを使用した約200人の平均値)。割合にして約14%の減少だった。

効果のもう1つの指標、「5%以上の体重減少」に成功した人は83%に上った。内臓脂肪も減少し、血糖値、血圧、コレステロール値も改善した。

なぜ体重が落ちるのか。それは、脳や胃の細胞の表面にあるGLP-1(グルカゴン様ペプチド‐1)受容体に作用するからだ。これにより、食欲が抑制されるとともに、胃の運動も抑えられる。一言でいうと、「食べたくなくなり、食べるとすぐ満腹になる」(横手医師)。

日本でセマグルチドが肥満症治療薬として発売された場合、次の3条件を満たす患者に使われることとなる。

■ 高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかがある
■ 食事療法・運動療法で十分な効果が得られない
■ BMIが次のいずれかに該当する
 ・BMI27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害がある
 ・BMI35以上

これをもとに、横手医師にセマグルチド使用のモデルケースを挙げてもらった。

ケース1
BMI35以上の高度肥満症。日本人では欧米ほど患者数は多くないものの、心身の健康問題を来しやすい。食事療法・運動療法だけでは減量が難しいため、それらをしっかり続けながら併用する
ケース2
BMI27以上で、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧がある人。体重が減ることで、肥満に対する考え方、生活への向き合い方の改善につながる。ほかの持病の薬を減らすこともできる
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