怒り心頭の「パルコ問題」、今後は投資家として対処--森章・森トラスト社長
--地震直後には、REIT(不動産投資信託)市場では西日本地盤の銘柄が値上がりしました。日本の不動産マーケットの中で、西日本の評価が変わったのでしょうか。
評価が上がったというより、もともと首都圏との価値の差がありすぎた。首都圏の物件が多くないREITは今まで下落局面にあったため、今回の地震で相対的に見直された。逆に、首都圏はもともと高く、リーマンショックで下がってから値を戻して、今回の地震でまた下がった。ただ、うちのREITでも80万円を超えている。特段下がったわけではない。少し調整されただけ。
──今回の震災を受けて、森トラストのエリアごとの戦略は変化するのですか。
ニュービジネスは日本では難しいので、中国でやる。不動産にこだわらず、投資家としていろいろな事業に関与していく。それから、中国に進出したい日本企業とか中国の製品の登録・認可を仲介する、フィービジネス。また、向こうの不動産はキャップレート(還元利回り)が低すぎて、貸しビルには向かない。中国で不動産をやる場合は分譲がいい。
一方、日本国内は少し自重しながら、手持ちのものを開発していく。開発の仕方についても、原発問題や電力不足の懸念があるため、共用スペースはオーナー側が自家発電設備を設置しつつ、各テナントも自分で自家発電装置を持てるような形が必要になる。繰り返しになるが、超高層住宅は日本には向かないと思っている。だから、免震の利く中層マンションがいい。地震のある国の都市のあり方を根底から考え直す時期なのかもしれない。
もり・あきら
1936年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、60年安田信託銀行入行。72年森ビル入社。社長室長、常務を経て、93年から森ビル開発(現・森トラスト)社長。森ビルの森稔社長は兄にあたる。
(聞き手:大滝俊一・週刊東洋経済編集長、猪澤顕明 =週刊東洋経済2011年5月28日号)
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