SBI新生銀株で「村上ファンド」は1100億円稼ぐ? 上場廃止前に株を買い増し、まさかの大量保有

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SBIと政府系株主以外の株主を排除することは、公的資金返済を可能にする意味合いが強い。

3500億円の公的資金を裏付けるのは政府系株主が持つ4700万株余りの普通株だけ。公的資金返済のためには1株が7500円ほどに上昇しなければいけない計算だ。

ところが、SBI新生銀の株価は長らく1000~2000円台で推移してきた。株価を短期間で3.5倍以上引き上げるのは難しい。

手を差し伸べたのがSBIだった。2021年に銀行業界初とされる敵対的TOB(株式公開買い付け)を成功させ新生銀を子会社化すると、2023年5月に再びTOBを発表。株式併合と端株の強制買い上げにより株主をSBIと政府系株主のみにしようとした。

株の価値は取得時の約3倍に?

非公開化によってSBI新生銀の株式は、市場で株価がつかなくなる。市場での株価は株式の需給動向などに左右されるとはいえ、多くの投資家によって形成される。それに対して非公開化は、株式の価値を明確には見えなくするものだといえる。

非公開化する他方で、SBI傘下のほかの地銀との連携を図ることなどで、SBI新生銀の利益を向上させる。それにより株式の価値を劇的に上げれば、遠くない未来に公的資金を返済することが可能になるというロジックだ。

そこにエスグラント、つまり村上氏は目を付けた。

政府系株主の株式の一部も株式併合後の強制買い取りの対象になる。そのため実際の公的資金返済額は、3300億円弱になるとみられる。

株式併合後、政府系株主が手にするのは2株。先述したようにエスグラントは1株を保有する。政府系株主が持つ2株には、公的資金返済額と同じ3300億円弱の価値があるとみなせる。そうするとエスグラントの持つ1株は、その半額の1650億円程度の価値になると計算できるのだ。

株式併合後のSBI新生銀の株主構成

この株を手に入れるためにエスグラントが投じたのは約560億円。見込める価値との差額は約1100億円となり、それだけの巨額を儲けられると、算盤をはじいたのだろう。SBIが公的資金返済を何十年も引き延ばしでもしない限り、極めて効率のいい投資だ。

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