転職前提で面接受ける若手に絶句した人事の顛末 「貴社をファーストキャリアとして考えています」に唖然

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いっぽう「プランド・ハップン・スタンス型」は、反対だ。与えられた仕事をこなしながら、都度自分のキャリアを修正していくタイプ。

運よく偶然の縁に恵まれたら、その縁を大事にして恩返しをする。この「運」「縁」「恩」を意識したスタイルだ。

一般的に、多くの人は「プランド・ハップン・スタンス型」だ。だから縁があって入社したのだから頑張って会社に貢献するのが当然、と受け止める。それが「恩返し」だと解釈するからだ。

だから「転職前提」の若者は、「恩知らず」とレッテルを貼られ、そんな若者を大切に育てたいという気持ちは芽生えないのだ。先輩も上司も。

「転職前提」の若手はジョブ型の意識が強い

2の理由は簡単だ。

もともと日本企業はメンバーシップ型雇用を続けてきた。職に就く(就職)のではなく、会社に就く(就社)考え方だ。今もまだ根強い。

だから採用する側も、組織に必要な能力よりも、職場になじむ「人柄」を求めがちだ。

いろんな職場を経験してもらい、当社で総合的に活躍できる人材を育てようとする。

そのせいもあって若手が入社したら、周りは最初から戦力としてアテにしない。しばらくは職場に慣れるよう、いろいろな雑用を言い渡す。そのほうが、メンバーと触れ合う機会が増え、関係づくりにも役立つと思うからだ。

もちろん「転職前提」の若手はジョブ型の意識が強い。

「私はこんな仕事をするために、この会社に入ったんじゃありません」

スタンスが違うので、かなりの不満を抱くことだろう。

3年後とか5年後には別のステージが待っている。逆算して自分のキャリアプランを描いている。だから、職場の都合で仕事の中身を変えられては困るのだ。

「なぜ自分の能力を伸ばす仕事をさせてもらえないんだ」

「これでは、いつまで経っても成長できない」

自分が描いたキャリアプランを柔軟に変えられるのならいいが、それができないなら離職する。そう決断する若者もいるだろう。だから短期間で辞める若者が絶えないのだ。

3の「配属先の士気が下がる」は説明不要だ。

プロ野球でたとえてみよう。ホームラン王になったこともある他球団の4番バッターをFAで獲得したのなら、開幕スタメンを約束してもいいだろう。

しかし、まだ実力がそれほど高くないのに、

「私は2番のショートでお願いします。それ以外の打順、守備はお断り。4年後にはメジャーで活躍したいので」

という新メンバーが加入したらどうか。監督やコーチがこの新人を優遇すれば、当然チームの士気は下がる。

メンバーシップ型雇用で考える人は、これまで会社の都合に合わせて自分の役割を柔軟に変えてきた。会社から求められる能力の向上に努めてきたのだ。

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