それにも増して、小野には勝算があった。
「なぎちゃんと話してると、芸能活動への未練があるな~っていうのが感じ取れて。それなら東京に来て、また一緒にやろうよと。だから不安がないように、これからどうすべきかロードマップを作っていきました。セルフプロデュースのときに裏方もやっていたので、こういうのは得意なんですよ」
かくして藤咲は小野の説得に応じる形で、再び上京することになる。
そう、このときの話し合いがなければ今、こうして藤咲がステージに立ったり、テレビに出たりすることはなかっただろう。
「緑ちゃんに言われてなければ、東京にまた来ることも絶対になかったので、今の自分はなかったと思います。ほんとに復帰する気もなかったし、とにかく子どもたちとこれからどう暮らそうってことを最優先で考えていたので。今こうしていられるのは緑ちゃんのおかげです」
藤咲自身もそう話すように、この決断が未来を分けた。
そして、2022年「最終未来少女」の第2幕が幕を開けた。新たに現在の事務所に所属し、再び2人で活動を開始する。
実際に上京した際に小野の家に住むことはなかったが、それでも小野も藤咲の家に行き、子どもたちの面倒を見るなど、家族ぐるみの仲だ。
「保育園とか無理でどうしようかなってときは、緑ちゃんによく子どもたちをみてもらってます。本当に感謝してます」
そういう藤咲に小野は照れながら答える。
「なぎちゃんは本当に凄いんですよ。ダンスレッスンも私ひとりでも大変なのに子育ての合間にこなしちゃうんです。ダンスの後にジムにいって、トレーニングして、また保育園にお迎えに行ってと。だから今、こうしていろんな方に応援してもらえる状況になって、よかったと本当に思います。まだこれからですが、ようやくだなと……」
偶然か必然か「世間に見つかった藤咲凪」
そんな小野の読み通り、藤咲が世に見つかることになる。
2023年6月、渋谷で答えたニュース番組の街頭インタビューの模様が放送される。
自身が映ったことをX(旧Twitter)でつぶやくと一気にバズり、一夜にしてフォロワーが8万人も増えるほど大きな反響を得た。
それを皮切りに「AIと勘違いされる美少女」としてABEMAニュースに出演。さらに、先の「サンデージャポン」(TBS)での告白とつながるわけである。
今2人はお互いの関係をどう認識しているのだろうか。その質問に対して、2人とも少しの沈黙の後、「難しいですね~」と顔を見合わせて答えた。見事なシンクロだ。
2人のここまでの話を聞き、「難しい」というこの言葉が、実に的確に今の2人を捉えていることがわかった。友達、親友、相方、どれもそうでありながらも、どれも違う。しかし、2人は確実に絆でつながっていることはわかる。
互いに寄せる信頼は厚く、ある種、不思議なものでもある。
今、2人はアーティスト「最終未来少女」としてステージに立っている。しかし、それぞれのこの先の目標は藤咲が「声優」、小野は「俳優」と違っている。
それもずっと2人で共有してきたことであり、今はその通過点なのだ。
藤咲が子どもを連れて上京を決意したあの日、小野が話した地図は今、まさに描かれている。
「最終未来少女」藤咲凪、小野緑の物語はこれからも深く紡がれる。
*この記事の前編:「AIみたいな美少女」と言われる「藤咲凪」本当の姿
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