弁護士が明かす「論理的に会話できる人」の頭の中 議論の流れを「問題提起」によってつくり出す
私たち弁護士が関わる法律の世界にも「門前払い」があります。弁護士の主な業務のひとつは、裁判を遂行することです。訴訟を起こし、勝訴判決を得るか、または有利な和解をすることにより依頼者の満足を目指します。
ところが民事訴訟では、訴訟を提起しても実質的な審理に入ることなく訴えを却下してしまうことがあります。これが、いわゆる「門前払い判決」と言われるものです。
「実質的な審理に入るための要件が欠けているために、審理の必要なし」
つまり、裁判を行うために十分な条件が揃っていないため、訴え自体が無効だというわけです。
「そういうあんたはどうなんだ」
では、この「門前払い判決」を議論に応用してみましょう。議論したくないときや、議論する価値がないと思ったときに利用できます。
小林「あなたにそんなことを言われる筋合いはないよ。なぜなら、第1に、あなたは社内で社員を呼ぶときに、男性には『〜さん』と呼びかけ、女性には『〜ちゃん』と呼びかけており、男女の差別をしているじゃないか。第2に、男性にお茶を入れさせることはないが、女性にはお茶を入れるように要求しており、男女差別をしている。第3に、男女の社員数は同数なのに、数人でチームを組んで行うような重要案件では、女性をほとんどチームに参加させず、男女を差別している。なぜそのような差別をしながら男女平等を主張するのか、この矛盾点を説明してもらいたい」
これに対し、中村さんは「今は職場環境をどうすべきかが問題なのであり、私の問題を議論しているのではない」と反論しました。小林さんがさらに追い込みます。
②指摘された例は男女差別に当たるが、それがやむをえなかった理由
③指摘された例は男女差別に当たるが、それは今の話題と関係がない理由
小林さんの言い分は、「そういうあんたはどうなんだ」ということであり、「議論の内容」自体を吟味するのではなく、「議論する資格」を問題にしているのです。
なお、この「門前払い」を相手にやられないためには、普段の生活を律する必要があります。その場のごまかしなどをやめ、首尾一貫した生き方をする必要があります。
そうしなければ、いつかこの「門前払い」の被害者になるかもしれません。
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