タンタン「返還期限は12月」人ならおよそ85歳の今 期限は延長される?現在は心臓疾患のため非公開

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タンタンは2007年8月12日に死産を経験。2008年8月26日に出産するも、赤ちゃんは3日後の8月29日に死んだ。するとタンタンは時おり、ニンジンを赤ちゃんのように抱き続け、パンダの母親が赤ちゃんにするようにペロペロと舐めるようになった。2020年は7月下旬から9月にかけて、細くて短い竹を抱きしめていた(参照:『中国に帰る「神戸のパンダ」25年の劇的な半生』)。

タンタンは基本的に発情した年に偽妊娠と偽育児をしていた。だが2021年以降の約3年間は「抱くような行動が多少みられることもありましたが、以前ほどしつこくなく終わったので、偽育児はないと判断しています」(梅元さん)とのことだ。

タンタンは高齢のため2020年7月15日を期限に中国へ帰る予定だったが、コロナ禍で延期された。もしタンタンが2020年に帰国していたら、パンダセンターの都江堰(とこうえん)基地で暮らすはずだった。自然が豊かで高齢パンダのケア体制が整った施設だ。

タンタンの姉のバイユン(白雲)は2019年5月にアメリカから約23年ぶりに帰国して、都江堰基地で暮らしている。筆者が2023年6月にここを訪ねると、バイユンはタケノコをよく食べて、元気そうだった。バイユンは現在32歳で、人間なら95歳くらいだ。

四川省の都江堰基地で暮らすバイユン。2023年6月16日(筆者撮影)

タンタンが中国に戻れば、王子動物園からパンダがいなくなる。だが神戸市は、将来もパンダがいることを想定しているとみられる。タンタンの中国返還が2020年に決定する前から、神戸市は新たなオスとメスのパンダの貸与を中国側に要請しており、この方針は今も変えていない。

また、王子動物園を含む王子公園は、神戸市が大規模な再整備を計画している。市が2023年9月20日に公表した「王子公園再整備基本計画」の素案には「動物収集計画」があり、「最優先種」にジャイアントパンダが入っている。ジャイアントパンダは、園内に整備する「アジアゾーン」で飼育する計画も記されている。

公開再開は未定

2022年12月は、上野動物園がシャンシャン(香香)、アドベンチャーワールドが永明、桜浜(おうひん)、桃浜(とうひん)の中国行きを発表した一方で、王子動物園はタンタンの中国返還延期を発表した。

タンタンの返還延期は、心臓疾患に加え、関西国際空港―成都間の定期直行便がコロナ禍で運休中(2023年に運航再開)であることなどが理由だった。飛行機移動と飼育環境の変化は、高齢かつ病気のタンタンの心身に負荷がかかる恐れがある。

タンタンの中国返還期限は2023年12月末。あと3カ月ほどだ。果たしてタンタンは、バイユンと同様に約23年ぶりの帰国を果たすのか。あるいは返還期限が再び延長されるのか。

王子動物園は「タンタンの体調について、日中双方でコミュニケーションをとって共有しています。それを基に、帰れるか帰れないかを、そのつど判断していくと思います」(菅野さん)とのこと。一般公開の再開についても、タンタンの体調を見ながら、中国との話し合いの中で決まっていくそうで、現時点では未定だ。

どこで暮らすにせよ、タンタンは無理をせずに、のんびり過ごしてほしい。

中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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