医師が伝授「認知症の進行予防」家族にできること あわてず、上手につき合っていくための心構え

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手紙を書く際は、相手への気遣い、伝えたい内容をまとめるなど、高度に頭を使います。脳に刺激を与える行為は、認知症予防に効果的といえます。まだ携帯電話がない時代は「手紙を書く」という行為は当たり前のことだったはずです。高齢者にとっては馴染み深く、かつての文通の経験を活かせるいい機会になるかもしれません。

役割を与えることが認知症予防になる

加齢とともに運動機能や認知機能などの心身の活力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態を「フレイル(虚弱)」といいます。

人は、身体的・心理的・社会的の3つのフレイルが相互に作用して弱っていくもので、認知症もその例に漏れません。

フレイルによる悪循環で認知症はどんどん進行する

例えば、腰を悪くし、外出できなくなる。結果、社会との接点が減る。さらに、外出できなくなったと自己嫌悪に陥り、余計に動かなくなり、認知機能や筋力が低下する。このような悪循環で認知症が進んでいくということです。

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身体的なフレイルは、医療やリハビリテーションで予防ができ、心理的・社会的フレイルは、家族の協力で予防できます。家族ができる予防策のひとつが、役割を与えることです。

日常のなかには、さまざまな役割があります。

例えば、孫の世話をする、洗濯をする、家族の相談相手になるなども、一種の役割です。

高齢者が今まで自分でしていた料理を、足腰が弱くなってきたからと家族が代わりにしてあげる。これはよくあることですが、その結果、脳を使う機会が減り、認知機能が低下していく可能性もあります。

できないと決めつけてしまうことは、認知症の進行を促す可能性があります。役割を与え「生きがい」をもたせることは、認知症のリスクを下げることにつながるのです。

岩瀬 利郎 精神科医、博士(医学)

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いわせ としお / Toshio Iwase

東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。著書に「心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答 第2版」、「心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版」(ともに共著、翔泳社)など。メディア出演に、テレビ東京「主治医が見つかる診療所〜寝起きの悪い人と寝起きのいい人の体は何が違うの〜」、 NHK BS プレミアム「偉人たちの健康診断〜徳川家康 老眼知らずの秘密〜」など。

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