生徒の動画を撮る"問題教師"もクビにならぬ背景 深刻化する「教員不足」の影響が各所に…

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ある女性の娘は発達障がいがあるわけではないが、小学1年生のうちは落ち着きがなく、嫌なことがあると動かなくなってしまった。それでも、経験豊富な担任に見守られながら学校生活を送っていた。

それが2年生で経験の浅い教員に担任が変わると、不登校気味になった。娘に手を焼いていた担任からは4月下旬の面談で「困り感はないですか」と聞かれ、「親御さんも苦労すると思うんです。娘さんのためにも特別支援学級に行ったほうが良いのではないか」と勧められたという。

発達障がいの検査を受けるよう、担任から勧められ…

他の女性の息子は、小学1年生の時に発達障がいがあるかないかの検査を受けるように担任から勧められた。理由は学校に行きたがらずに親と一緒に登校し、それでもなかなか教室に入ることができなかったから。

女性は「先生と息子の信頼関係ができれば、息子は変わるはず」と感じていた。実際に検査を受けると何も指摘されず、2年生になって担任がベテランに変わると見違えるように楽しそうに登校するようになったという。

前述の特別支援学校の教員らは「教員の休職や離職は増加しています。現場に余裕がないと、手のかかる子を見たくない気持ちも働いてしまうのかもしれない」と指摘する。

文部科学省の「学校教員統計調査」(2022年度)の中間報告では、公立小学校を「定年以外」で辞めた教員は2012年度の6015人から2021年度は7016人に増えている。理由は転職や家庭の事情のほか、精神疾患も多い。

思うように教員が増えないなかで文部科学省は、「教える科目を減らすことで教員の負担を軽減するよう『教科担任制』を強力に推し進めている」と説明する。例えば算数や図工などの教科だけを教える教員を加配する場合、国から補助が出る。学級担任はその時間、空き時間になるため別の授業の準備や書類作成などの業務に当たることができる。

文科省の「公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査」を見ると、「教科等の担任制」(2022年度計画)は、小学校の高学年で導入する率が高まる。6年生で見ると、理科が最も高い65.4%、次いで音楽の59.6%、外国語の48.9%、家庭の41.9%なども高くなっている。

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