生徒の動画を撮る"問題教師"もクビにならぬ背景 深刻化する「教員不足」の影響が各所に…
もともと由紀さんの息子の浩之君(仮名)は入学直後、登下校班の列にうまく並べなかったことで、担任に強く注意を受けていた。担任が後ろから浩之君のランドセルを掴んで強く揺さぶりながら「先生は言うことを聞くまで言うからね、先生はしつこいからね」と叱責している場面を由紀さんは目撃もしていた。
4月下旬になると、浩之君がふいに「学校で先生に動画を撮られた」と口にした。どういうことだろうと疑問に思っていると、あるとき担任から呼び出された。「休み時間が終わってもふざけていたので、親御さんに見てもらえるように動画を撮りました。撮れていなかったんですけど」と言われた。
浩之君に聞くと、黒板の板書をノートに書き写すことが遅い時や、算数の授業でわからないことがあって落ち込んでいる時に、動画を撮られたことがあると打ち明けた。
問題ある教師が、学校側に守られてしまう現実
「これは指導の範囲を超えているのではないか」
そう感じた由紀さんは校長に相談したが、校長は動画の撮影について「クラスだよりに使うためではないか」と、担任をかばうような口ぶり。モヤモヤした感情が残ったまま夏休みに入った。
9月に入って新学期が始まると、浩之君が帰宅してから家でよく泣くようになった。ある日、家で宿題をしている途中で「自分は、なんで勉強ができないの?なんで、皆みたいに覚えられないの?」と言って激しく泣き出した。「学校で何かあった?」と聞くと、また「算数の時間に先生に動画を撮られた」と言うのだ。テストの点数が悪いと、「そんなのもできないの?」と言われて、教室で立たされていた。
10月になると、同じクラスの児童の母親から、「図工の時間に浩之君の絵が下手だと言って先生が黒板に貼り出して皆の笑いものにしていたと、うちの子が心配して言っていた」と聞かされた。担任が絵を貼り出したのは、クラスの皆が同じような構図と大きさの絵を描くなかで、浩之君の絵だけが小さかったことが理由だったようだ。その他の行為も含めて校長、副校長、担任と面談を行い、学校側は由紀さんに謝った。
その1週間後、担任は浩之君一人を図工室に呼び出して、「先生は、皆に意地悪をしていますかぁ?」と迫った。浩之君は、ただ首を横に振るのが精いっぱい。浩之君を呼び出した後で、クラスの児童を並ばせて順に同じことを聞いていった。浩之君の絵が下手だと言ったことを誰が保護者に言ったのか、その犯人捜しをしたようだった。
浩之君は泣きながら帰宅。翌日は「学校が怖い」といって欠席した。由紀さんの夫が学校に連絡をすると、複数の保護者からも苦情が来ていたことを知った。浩之君は「自分だけ怒られる」「ぼく、どうすればいいの」と泣きながら震え、しばらく学校に行くことができなくなった。
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