生徒の動画を撮る"問題教師"もクビにならぬ背景 深刻化する「教員不足」の影響が各所に…

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何度も校長や教育委員会に相談して担任への指導などを要望したが、「先生を良いと思っている保護者もいます。特定の人が言っているだけではないですか」とのれんに腕押し状態。浩之君の精神状態はみるみるうちに悪くなっていった。

その間、業を煮やした由紀さんら複数の保護者は子どものランドセルにボイスレコーダーを忍ばせ、前述したような担任の言動が次々に判明。1年生が終わる頃、録音があることを教育委員会に告げ、学校との話し合いで翌年の進級時に担任を変えてもらうことができたが、由紀さんは今も不信感をぬぐえない。

「ここまでして、やっとです。けれど、今また同じことを次に担任したクラスでもしていると聞いています。公立学校の教員は公務員だから、よほどの事件でもなければクビにはならないのでしょうか。教壇に立たないでほしいと願っても、難しいのです」(由紀さん)

こうした、教育者としての資質に疑問を感じるほかない教師が“学校側に守られる”理由のひとつに、「教員不足」があると筆者は考えている。

浩之君が通う小学校がある県でも、2024年度の公立小学校の教員選考試験の志願者数は昨年度より大幅に減っている。

ある教育関係者は「教員が心身の不調で休職しても代替の教員が見つからず、副校長や校長が授業をしている現状もあります。そうしたなかで、たとえ資質のない教員がいても、代わりの人材がいないと打つ手がないのです」と苦しい胸の内を語った。

本来は資質ある教員だったとしても、現場に余裕がないことで「皆と同じことを、同じペースで、同じように」を求めてしまい、それができない児童を疎んじてしまうケースもある。

審査を通さず、特別支援に移そうとするケースも

そうした影響は、特別支援学校や特別支援学級にも及んでいるかもしれない。特別支援の場で働く複数の教員は、こう口を揃える。

「本来なら特別支援を受けなくても良い子どもたちが送られてくるのです。少し目立つタイプというだけで、教員が『子どもを見きれない』と普通の学級から特別支援に移そうとするケースは少なくありません」

特別支援学校や特別支援学級は、心身に障がいがあり特別な支援が必要な子どものためにある。特別支援学級は小中学校のなかに設置される少人数クラスとなる。ほかに、通常の学校に在籍しながら週何日か通う「通級指導教室」などの支援もある。いずれも専門家による審査などを通して入学や通学が決められるが、そうした審査を通さずに担任の考えだけで保護者に勧めてしまう実態もある。

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