商標「AFURI」めぐる訴訟、両者の類似をどう判断? 指定商品を広く設定することは「一般的」

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商標の類否判断は、古くから、以下のように最高裁で判断手法が示されています。

両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断する。

特許庁は類似しないと判断している

ところで、特許庁では2021年6月30日に、吉川醸造の前記した独特な書体で構成された「雨降」が商標登録されていて(この商標は2022年8月22日、誤って登録されたものであるとして、無効にするようにもとめる審判が請求されています)、特許庁は、「AFURI」、「阿夫利 AFURI」、「AFURI」と図形を結合したAFURI社の登録商標と吉川醸造の「雨降」は類似しないと判断しています。

ちなみに、吉川醸造が2023年3月14日に出願した、独特な書体の「AFURI」と「雨降」の結合商標は現在、特許庁で審査中です。

そもそも、阿夫利山という山が存在し、阿夫利山が雨降山から転じたものであるならば、「アフリ」と呼称し、阿夫利山やその周辺地域を含む地域を概念する商標を、特定の者に、広く独占させてよいと思いませんので、個人的には、「雨降」と「AFURI」が類似しないという特許庁の判断が正しいと考えます。

そして、吉川醸造がラベルに使用している「雨降 AFURI」の「AFURI」の部分が「あふり」と読むことの説明的記載で分離して評価せず、「雨降」が主要な部分と考えるならば、「雨降」と「AFURI」が類似しないと評価するのと同様に、「雨降 AFURI」と「AFURI」も類似しないということになります。

そして、これは、個人的な経験を前提にした思い込みかもしれませんが、「雨降 AFURI」を目にしても、AFURI社の出所を示すものと混同することもありませんので、上記した結論に問題はないと考えています。

一方、吉川醸造のラベルの裏面部には、「AFURI」とだけ記載されたラベルが存在し、吉川醸造が「AFURI」という表示だけを単独で使用し、この使用がAFURI社の商標権を侵害していると評価できなくもありません。

ただ、裏面部の「AFURI」については、ラベル裏面という表現範囲が限られたところで、「雨降」の呼称のみを説明的に記載しただけで、裏面の「AFURI」に出所表示として機能が存在しないと考えてよいのではないでしょうか。

プロフィール
冨宅 恵(ふけ めぐむ)弁護士
スター綜合法律事務所
大阪工業大学知的財産研究科客員教授。多くの知的財産侵害事件に携わり、プロダクトデザインの保護に関する著書を執筆している。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。「金魚電話ボックス」事件(著作権侵害訴訟)において美術作家側代理人として大阪高裁で逆転勝訴判決を得る。

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