商標「AFURI」めぐる訴訟、両者の類似をどう判断? 指定商品を広く設定することは「一般的」

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商標が類似するかどうか検討するとき、外観、称呼(読み方)、観念(意味合い)という3つの要素を総合的に考慮して決まる。

AFURI社は、外観、称呼、観念のいずれの観点からも互いに類似する関係にあると主張している。

●外観
「AFURI」の文字書体はわずかに異なるものの、構成する「A」「F」「U」「R」「I」は全て共通するため、実質的に同一または少なくとも互いに類似する。
●称呼
「アフリ」の称呼において共通していて、同一である。
●観念
神奈川県伊勢原市に位置する大山の通称である「雨降山(アフリサン)」との観念が生ずる点において共通する。
さらに、吉川醸造の日本酒はAFURI商標権の指定商品である第33類の「清酒」に含まれるため、「原告指定商品と被告商品とは同一の関係にある」と指摘。吉川醸造の販売行為は、商標権を侵害するものであるとして、1100万円の損害賠償を請求している。

訴状によると、AFURI社は提訴に至る前、吉川醸造と交渉をおこなっていた。

まず、2022年8月22日付の書面で、吉川醸造に「商品が商標権を侵害し、不正競争防止法違反である」と通知した。

翌月、吉川醸造から、商品は商標権侵害、不正競争防止法違反のいずれも成立しないこと、一定の和解案を提示するものの、今後も商品中のAFURIのアルファベット表記は継続する、といった回答があった。

その後、両者は書面や複数回の面談によって和解交渉をおこなったが、吉川醸造が商品ラベル中のAFURIのアルファベット表記の使用は今後も継続するとしたため、訴訟提起に至ったという。

吉川醸造の反論は?

答弁書によると、吉川醸造は「外観、称呼、観念はいずれも異なり、取引の実情に鑑みても、出所の誤認混同が生じるおそれはないため、非類似である」などと請求棄却を求めている。

●外観
AFURIの商標は通常用いられるような書体で「AFURI」と黒色で表記したローマ字である一方、吉川醸造の標章は、ラベルであり多数の文字から構成されているので両者は顕著に異なる。
●称呼
AFURIの商標に接する需要者は「あふり」という3音を認識する。一方、吉川醸造の標章は、多数の文字やデザインから構成されるものであるため、そこから特定の称呼が生ずるものとは言えず、称呼は異なる。
●観念
AFURIの商標は、AFURIが「AFURI」と「阿夫利」を構成要素とする商標を多数出願し、その商標意見を有していること、AFURIが経営するラーメン店では「AFURI」と「阿夫利」が同時に使用されていることに鑑みると、AFURIの商標に接した需要者が、取引上自然に想起するのは「阿夫利」という漢字である。
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