商標「AFURI」めぐる訴訟、両者の類似をどう判断? 指定商品を広く設定することは「一般的」

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この「阿夫利」とは、神奈川県にある大山の近郊地域の通称名、および、大山阿夫利神社を表示する標章の要部またはその著名な略称であるため、AFURIの商標に接した需要者は「阿夫利」という漢字から、大山の近郊地域または「阿夫利神社」を想起する。

一方、吉川醸造の標章に接する需要者は、ラベル正面部分に記載された「雨降」の漢字の一般的な意味から、「雨が降る」「雨が降っている」といった意味または意味合いを想起するため、観念はまったく異なる。

「AFURI側は許諾している」」

また、「標章の使用について、AFURI側は許諾している」とも主張している。

吉川醸造は日本酒「雨降」の販売に先立ち、AFURIが商標権を取得し、AFURIまたは阿夫利との名称を使用していたことを認識していた。2021年2月に電話でAFURIの常務に連絡したためだ。

吉川醸造の代表取締役は2021年2月に、大山の地域の通称である阿夫利に由来して、「雨降」と書いて「あふり」と読む銘柄の日本酒の販売を考えていることをAFURIの常務に電話で伝えた。AFURIの常務は「面白いですね」といい、異論は唱えなかったという。

さらに、吉川醸造の代表は「読み方がやや特殊なのでローマ字でAFURIと読み仮名を振りたい」と伝えたところ、AFURIの常務は「お互い元は同じ(阿夫利に由来)ですから(問題ない)」「一緒に大山を盛り上げていきましょう!」といい、雨降(あふり)の名称の日本酒にローマ字でAFURIと読み仮名をふすことを快諾したという。

電話したときから商品を販売することを知っていたにもかかわらず、書面を送るまでの2022年8月までの1年半に、商標権侵害であるとのクレームをおこなったことはなかったとし、「これはAFURIの常務が吉川醸造の代表に対し、雨降のローマ字読みとしてAFURIと記載することを快諾していたに他ならない」と主張している。

「産地を示す商標」でなければ商標登録できる

双方の主張をふまえて、商標にくわしい冨宅恵弁護士の見解を聞いた。

──「阿夫利」というのは、地域・歴史・文化に根差した名称でもあります。地域の名称などを個人や企業が商標登録し、独占することは可能なのでしょうか。

商標は、特許庁で審査を受けて、商標法が定める登録要件などを満たしていると判断されてはじめて登録されるのですが、商標法が定める登録要件の1つに、「登録商品の産地や販売地を『普通に用いられる方法』で表示する商標でない」ことがあります。「普通に用いられる方法」とは、その書体や全体の構成等が特殊なものでないものを言います。

ですから、商品の産地や販売地を、産地や販売地を示すために用いられる方法で表示する商標が登録され、特定の者に独占されることはありません。

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