商標「AFURI」めぐる訴訟、両者の類似をどう判断? 指定商品を広く設定することは「一般的」

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AFURI社が、商標権が侵害されていると主張している「AFURI」という商標は、「阿夫利山」の山名から由来する商標で、産地に由来しているものの、産地を示す商標ではありませんし、産地を示すために用いられる一般的な方法で表示されているとまで言えませんので、特許庁に登録されていると推認できます。

指定商品を広く設定することは「一般的」

──AFURI社は「阿夫利」「AFURI」で構成される商標を複数取っており、指定商品も数多くあります。企業における商標管理として、指定商品を広く設定することはよくあることなのでしょうか。

AFURI社は2019年4月24日に、清酒に使用することを前提に「AFURI」という商標を出願しているのに対し、吉川醸造は2021年4月17日以降、清酒のボトルに「雨降 AFURI」と記載されたラベルを用いているようで、AFURI社の商標出願のほうが先におこなわれています。

そして、AFURI社は、複数の商品や、それにまつわるサービスを指定して、「阿夫利 AFURI」や、「AFURI」と図形を結合した商標など複数の商標登録を受けています。

このような商標登録は、多くの企業で、広範な商標権を取得するために一般的におこなわれていることで、AFURI社だけがおこなっているわけではありません。

似ているかどうかはどう判断する?

──今回の2つの商標が似ているかどうかは、どのように判断するのですか?

吉川醸造は、自社が使用するラベル全体が使用している商標であると主張して、AFURI社の登録商標「AFURI」と類似しないと主張していますが、吉川醸造のラベルの内、輪郭であるとか、付飾的な部分や、付記的な部分のように識別機能に影響のない部分を除外して判断することになります。

そのため、吉川醸造のラベル表面部分の「AFURI 雨降」や「雨降 AFURI」とAFURI社の「AFURI」を比較することになると思います。

ちなみに、阿夫利山という山が存在し、吉川醸造が説明するように、阿夫利山が雨降山から転じたものであるならば、「雨降」が「あめふり」と読むのではなく「あふり」と読むということを説明したものであると評価できますので、個人的には、「雨降」と「AFURI」を分離すべきではなく、「雨降」の部分が主要な部分であると考えます。

また、吉川醸造のラベルの「雨降」は、阿夫利神社の神職に揮毫してもらった独特な書体ですので、そういった書体で構成された商標として類似するか否かの判断をすることになります。

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