A)人工関節の素材は金属で、人工軟骨は医療用ポリエチレンです。いずれにせよ人工物なので、デメリットは血液が流れていないということです。血行がないので、新陳代謝はしません。金属は100年くらい持ちますが、ポリエチレンは現在のところ耐用年数は約15〜20年となります。
ポリエチレンは、すり減ったら入れ替えなければなりません。人生100年時代になったとはいえ、高齢での再手術はからだに負担が大きい。かといって保存療法が合わない場合は、ポリエチレンの寿命のことなど考えず、さっさと手術を受けて痛みなく歩けるようにすべきだと考えます。
術後は感染症や血栓症に注意
A)感染症のリスクが1〜2%と報告されています。100名この手術をすると、2名ぐらいは感染症を起こす可能性があるということです。
僕らの皮膚や腸にはたくさんの細菌がいて、からだにいいはたらきをしたり、逆の作用をしたりします。しかし普段、関節内にはどの細菌もいません。
体力が落ちたときなど、抵抗力が下がると、からだのどこかでばい菌が異常に増えて、関節の中にも菌が入ってきます。ばい菌を退治するのは血液の中の白血球なので、ばい菌は生き残りをかけて「血液がほとんどない金属のかげ」に隠れ、巣をつくろうとするわけです。
人工関節などの異物にはまったく血液がないので、ばい菌にとっては絶好のすみかになってしまう。血が通っているところを避けたばい菌が、骨と人工関節の間に隠れてしまったら、抗生剤も効きません。抗生剤も血液で運ばれるからです。こうなるとひざから人工関節を抜去しなければ治りません。
ですから人工関節置換術後に感染症が疑われるような高熱が出たら、ばい菌がからだ中に散らばる前に抗生剤の点滴をして、菌を殺さなければならない。医師に「人工関節置換術を受けた」と申し出て、抗生剤投与などの処置が早ければ、大事に至ることは少ないです。
また、下肢の手術を受けた患者さん全般にあるリスクとして、血栓症があります。手術をしたあと2〜3日は痛いので、あまり動かずにベッドの上でじっとしていることが多くなります。そうすると、下腿の筋肉のポンプ作用が少なくなるため、ふくらはぎに血栓が生じる可能性があります。
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