スマホ「アプリ自由競争」を巡る世界の熱い議論 通信事業者への優遇を水面下で進める日本政府

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独自に入手した資料には、グーグルやアップルのプラットフォーマーのアプリストアの議論の中に、携帯電話事業者(キャリア)のアプリストアをプリインストールさせる議論が含まれており、自由競争環境を維持するといいながら、限られた国内の通信事業者を優遇しようという意図が透ける。

また会議で用いられた公正取引委員会の調査では、サードパーティーのアプリストアを許可しているAndroidにおいても、ユーザーが公式のGoogle Playストアを選択する結果、アプリ開発者もGoogle Playストアを重視するという、消費者の選択の結果である点が明記されている。

サイドローディングで子どものデジタル安全が危機に

しかし日本ではサイドローディングの許可ありきで進む議論に警鐘を鳴らす専門家も多い。とくに、子どもの安全性を守れなくなる点で、リスクの大きさが強調される。

元IBMでネット教育アナリストの尾花紀子氏は、グーグルやアップルが用意している、デジタルを健康的に活用する機能が、無効化する可能性を指摘する。

グーグルやアップルは、「デジタルウェルビーング」や「スクリーンタイム」といった機能を通じて、子どもたちがどのようにスマートフォンやタブレットを活用するか、親がルール付けする機能を、OSに取り入れてきた。

また子どもたちの個人情報が流出しないようにするプライバシーやセキュリティ機能の強化、有害なコンテンツへのアクセス制限やフィルタリングを通じて、親が安全性を担保できる機能も加えてきた。これらは、OSと、審査を通じて配信・販売されるアプリにも、ルールとして適用される。尾花氏は、その前提が崩れるとしている。

「アプリを、グーグルやアップルのように、誰が審査するか? 安全を保つ機能に準拠することを、誰が担保するのか? サイドローディングの議論で抜け落ちている重大な議論です」(尾花氏)

次ページ「子どもがスマホを安全に使う仕組みが損なわれてしまう」
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