現代の高校生がわからなくなった数学の基本問題 「p⇒(ならば)q」の否定文から考える数学教育

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「p⇒q」の否定文をきちんと理解することは重要なので、ここで2つの話題を紹介しよう。まず、有理数とは 「整数/整数」の形に表せる実数のことである。

もちろん、

0=0/1, 1=1/1, 2=2/1, 3=3/1 ・・・

なので、整数は有理数である。そして、次の定理が成り立つ。

定理 xとyは有理数とするとき、次が成り立つ。

x+yとxyが整数⇒xとyは両方とも整数

上の定理の証明は、(結論を否定して推論を進めて矛盾を導く)背理法で示すことが普通である。すなわち、x+yとxyは整数であって「xとyの少なくとも1つは整数ではない」ということがあるとして、矛盾を導くことである(本稿では証明は省略)。

矛盾を導いてみると…

もう1つは、算数の世界からの例である。

 A、B、Cの3人がいて、ある仕事を3人で行っても1時間以上かかるとする。このとき、1人が単独でその仕事を行うと、2時間以上かかる者が少なくとも2人いる。

この例も背理法で示すことが普通である。すなわち、3人で行っても1時間以上かかって「単独でその仕事を行うとき、2時間以上かかる者が1人以下しかいない」ということがあると仮定して、矛盾を導いてみよう。

その仮定から、3人の内の少なくとも2人は、単独でその仕事を2時間未満で終わらせることになる。その2人をX、Yとすると、XとYはどちらも単独で1時間あたり、仕事全体の半分より多くを終わらせることになる。

それゆえ、XとYの2人でその仕事を行うと、1時間より短い時間でその仕事を終わらせることになって、最初の前提「3人で行っても1時間以上かかる」に反して矛盾である。したがって、1人が単独でその仕事を行うとき、2時間以上かかる者が少なくとも2人いるのである。

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