現代の高校生がわからなくなった数学の基本問題 「p⇒(ならば)q」の否定文から考える数学教育
高校生を多く集めたい大学理系学部の関係者は高校生に対する説明会で、「ウチの大学の理系学部では、数学IIIまで学んでいなくても困りません」と大ぴらに無理な発言をしていることが、あちこちの大学関係者から聞く。
本当は、そのようなごまかしの発言をするのではなく、教養での数学教育を真に充実させるべきである。それによって、理系に必要な微分積分や線形代数の固有値などを丁寧に学ばせるとよいだろう。ちなみに拙著『新体系・大学数学入門の教科書(上下)』(講談社ブルーバックス)は、その方面の一つの参考図書として執筆したものであり、「p⇒q」の否定文は所々で用いている。
横一線の教育を見直し、それぞれに見合った教育を
一方で、いわゆるデータサイエンスの学びに関して、「やり方だけを覚えて真似するだけでよいので、微分積分や線形代数などは車の運転の仕方を学ぶ気持ちでやればよい」とまで一部で囁かれているようで、残念でならない。そのような皮相な学びは、違法な建築物をごまかすかのようなもので、技術立国日本の再生にはつながらないだろう。
なお筆者は、戦後の目覚ましい復興期の礎となった護送船団方式の数学教育に戻せという気持ちはまったくない。数学についての理解力は個人個人で大きな開きがあるので、早く進む生徒もいればゆっくり進む生徒もいてよいはずだ。横一線の教育を見直し、文系・理系を問わず、誰もが個人個人に見合った数学の教育を受けさせてあげたいと考える。それが、技術立国日本の再生につながることであろう。
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