現代の高校生がわからなくなった数学の基本問題 「p⇒(ならば)q」の否定文から考える数学教育

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さて、「背理法」は強力な論法であるが、一方で推論を進めている部分には”嘘”のことがしばしば現れるのである。そこで、背理法による長い証明を読むのは辛いときもある。とくに、有限群論や離散数学などの有限数学では必然的に背理法が多くなることもある。

筆者はその世界で生きてきた過去もあるので、何も気にしない。それどころか、犯罪の容疑者と思われた人に”アリバイ”が見つかって無罪になる過程の議論は、正に背理法である。また筆者が東京理科大学在籍中には、数学科の入学試験に「背理法を説明せよ」という記述式の問題が出題され、後に朝日新聞の一面でも取り上げられた懐かしい思い出がある。

およそ背理法の証明を書いている人は、「どこでもかまわないので、とにかく”矛盾”を導こう」という心境になりがちである。それが、時にミスによる大問題を引き起こすこともあるので、背理法の証明を書くときは、とくに謙虚な心をもつことが求められるだろう。

一般教養での数学教育の充実が必要

最近、大学の理系学部を充実させて、理系人材を増やす政策が文部科学省から示されている。それならば、基礎となるべき一般教養での数学教育をもっと充実させなくてはならないはずで、2018年末に発表された経団連の提言にもある。

高等学校での数学も、冒頭に示した70年代に使われた教科書時代の数学I、数学II、数学IIIという流れ(当時の理系進学者はそれら全部を必修)ではなく、現在では数学I、数学II、数学III、数学A、数学B、数学Cから選んで学ぶアラカルト方式である。この問題点については、「消えた『数学C』が復活、奇妙すぎる日本の教育改革」に詳しく述べてある。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事