低福祉国家なのに民間保険に入らない米国。高福祉なのに民間保険に入り続ける日本。両極端ですが、米国と日本はどちらも不思議な保険大国です。
バランスのとれている欧州先進諸国
官民の保険制度がある程度バランスしている例が、欧州の先進福祉国家です。その代表である英、仏は、高福祉国家として社会保険は成熟段階にあります。しかも民間保険とのバランスが取れています。国の役割と民間の役割がうまく分担され機能しているということです。
ロンドン在住の友人に、英国人の保険加入意識の実態を調べてもらったことがあります。最低限必要な保障は国から提供されていますので、民間の生命保険、たとえば日本ではおなじみの死亡保険、医療保険などの保険に入っている人は限られているそうです。生命保険に入るのは、住宅ローンを借りて保障が必要な時ぐらいです。時々、子どもが成人するまで扶養者が死亡保険に入る例もありますが、その場合も夫婦それぞれの収入をよく計算して、子どもが卒業するまでの最低限の学費と生活費をカバーするだけの保険に入ります。必要最低限の保障額、保障期間に絞っているということです。英国人が入るのはもっぱら運用目的の生命保険です。これが、統計上3位の英国の実態です。
世界4位の仏国では、米英よりさらに保障系の生命保険に入りません。仏ではかねてから銀行で保険を買うこと(バンカシュアランスと言います)が一般的ですが、銀行で扱われているのは貯蓄が目的の運用系生命保険です。これらは日本で言えば年金や投資信託にあたります。
欧州各国では、一般に社会保障が充実しています。高い福祉水準であること、そして女性の社会進出が進んでいることから、保障系の生命保険にはほとんど入りません。生命保険といえば貯蓄目的の運用系生命保険が中心です。これが、社会保険制度が充実した国の、バランスのとれた保険の入り方なのです。
米国は建国以来の伝統的な考え方に抵触することを恐れず、ついに医療保険改革に踏み切りました。国論を二分するオバマ大統領の大改革がスタートしています。
日本の社会保険制度が今のままの「高福祉中負担」で維持できないことを国民はようやく理解しつつあります。機は熟してきました。社会保険制度の抜本改革と財政健全化が急務です。
不思議な保険大国、米国と日本。2つの国が今後どのように社会保険と民間保険の舵を取りバランスさせていくのか、大いに注目したいところです。
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