シャープ"延命策"には課題が山積している ニューマネーの不足が決定的

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2017年3月期までに優先配当を実施しない場合、2018年3月期末時点で、未払いの状態で累積しているであろう優先配当金等は、計算上、遅延利息を含めてA種、B種合計で210億円程度になる。

シャープが今期計画している固定費削減額は285億円である。その7割以上が3年後には銀行やファンドに吸い上げられてしまうことになる。

配当の優先順位はB種、A種、普通株の順番なので、普通株を保有する既存株主への配当は、優先株への配当、それも過去からの累積分全てを支払った後、それでも余力があればということになる。

しかも、優先株の株主が金銭で優先株の取得を会社側に請求した結果、キャッシュが底を突けば、普通株株主への配当はさらに後回しにされる。首尾良く再建が果たせたとしても、100%減資は免れたとはいえ、普通株の株主にまで再建の恩恵が及ぶまでの道のりは長い。

ゼネコン・フジタが残した教訓

今から10年前の2005年に実施されたゼネコン・フジタの私的整理では、ゴールドマン・サックス系のファンドが410億円のニューマネーを提供する一方で、金融機関は988億円の債務免除を吞み、既存株主は96%の減資を余儀なくされた。

当時のフジタにとって、410億円という金額は年間販管費の2.4年分、営業利益4年分に相当する金額だった。このときゴールドマン・サックス系ファンドが引き受けた優先株の配当条件はTIBOR+450ベーシスポイント(4.5%)。当時のTIBORは0.09%だったので仕上りでも4.5%程度だった。未払い配当を翌期に繰り越す累積条項は付いていなかった。

だが、ほぼ同時期に優先株スキームで債務超過脱出を図った長谷工コーポレーションの発行条件はTIBOR+1.0%。フジタの条件の悪さが目立ったが、債務免除のおかげでフジタ単体は名実ともに無借金、連結も現預金残高が借入金残高を上回る実質無借金となり、2006年3月期からさっそく優先株のみならず普通株への配当も可能になった。2008年のリーマンショックで事態が暗転するまでの3年間で、ゴールドマン・サックス系ファンドが手にした配当は総額67億円に上る。

当時のフジタはそれ以前に繰り返された中途半端な再建策の失敗から、1200億円もの債務超過になっていた。このとき、そのわずか2年前に三井住友銀行が300億円で取得した優先株は、あえなく全額無償償却になっている。

一見焼け太りに見えるみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行が、フジタのケースでの三井住友銀行の二の舞にならない保証はない。この点で、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行も、自身の株主から銀行としての判断の是非を問われた場合、どう回答するのだろうか。

今回の資本政策は債務免除も伴わず、ニューマネーも将来に向けた戦略的投資を行うに十分な金額とは言えず、金融機関に借入金のロールオーバーを拒絶されればひとたまりもない。とりあえず純資産をプラスに戻す効果以上のものはない。

一連の資本政策は6月23日開催予定の定時株主総会での決議を要する。シャープの株主はどんな判断を下すのか。上位株主には生保や2013年3月に資本提携したサムスン電子、2012年に資本提携したクアルコムなどが名を連ね、発行済みの約2割は外国人投資家が保有する。株主自身が自らの株主に対し説明責任を全う出来る判断とはいかなるものになるのか。来る総会は、日本の市場参加者の「民度」を問う場になるのかもしれない。

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