シャープ"延命策"には課題が山積している ニューマネーの不足が決定的

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前期の営業赤字転落に大きく影響を与えたのは、太陽光関連のポリシリコンの長期契約関連の損失587億円と液晶の在庫評価損295億円の合計882億円である。原価にインパクトを与える評価関連の損失が今期はなくなるほか、希望退職で150億円、本社のスリム化や給与、賞与のカット等で135億円を削減する予定で、ここまでで営業益の改善予定金額は1167億円である。

これに加えて液晶と太陽光関連の収益率改善分を見込んでいるのだが、その前提が何とも楽観的だ。特に液晶では5%の増収前提で通期の営業利益率を5.7%としているのだが、前期の液晶の営業利益率は評価損の影響で0.1%。ただ、評価損がなかったとしても3.3%でしかない。しかも通期で5.7%とは言っても、上期は0.1%、下期で7.1%という前提になっている。

液晶で通期5.7%もの営業利益率を確保できたのは、リーマンショック直前の2008年3月期の7.1%が最後だ。消費増税前の特需という恩恵があった2014年3月期ですら利益率は4.2%だった。

しかも、経常利益以下の予想を出していない。今期はさらなる構造改革関連の特損発生の可能性も匂わせているものの、具体的な言及はない。つまり、積み残しになっている宿題が何で、それをどのように、いつまでに解決するのか、という道筋が説明されていないのである。

みずほ、三菱東京UFJは焼け太り?

金融支援策も実に中途半端だ。シャープは2015年3月末時点で資本金が1218億円、資本剰余金が959億円ある。利益剰余金のマイナスが単体で2197億円、連結で874億円なので、減資と資本剰余金の取り崩しで利益剰余金のマイナスを埋めてから、2250億円の増資を実施し、単体純資産を2091億円に戻す計画になっている。

先行した報道では、99.9%減資して資本金を1億円にするとされていたが、実際には5億円とする案に落ち着いたようだ。とはいえ5億円でも99.6%の減資だから、100%減資を原則とする法的整理と紙一重であることに違いはない。

問題はこの2250億円の増資の中味である。全額優先株の発行による調達で、このうちの2000億円はみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が1000億円ずつ引き受ける。ただし、有利子負債を優先株に転換するデットエクイティスワップ(債務の株式化、以下DES)なので、ニューマネーが入るわけではない。

ニューマネー部分は企業再生ファンドであるジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)が引き受ける250億円部分のみだ。

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