シャープ"延命策"には課題が山積している ニューマネーの不足が決定的

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今回、DESの対象になるのは、2015年3月期末時点の単体有利子負債8641億円のうちの2000億円にすぎない。2015年3月期の単体支払利息総額は210億円だったため、そこから類推すると支払利息のレートは平均で2.3%前後である。

銀行が引き受けるA種優先株の配当金額は、発行額に対して年間TIBOR+250ベーシスポイント(2.5%)となっている。5月15日時点の日本円6カ月TIBORは0.25%なので、0.25%+2.5%で約2.75%ということになる。2000億円に対する配当金額は約55億円。TIBORレートが変わらない前提で、3年間の配当金額は約150億円である。

DESによって2000億円部分のレートが約50ベーシスポイント上がる一方で、債務免除は一切実施しないので、6641億円の有利子負債に対する金利負担は残る。

さらに、この優先株には将来、銀行が会社側にこの優先株を買い戻すよう請求出来る取得請求権が付与されている。要は、出資でありながら、会社側に「返せ」と言えるのである。対価は株でも金銭でも可。シャープの普通株を対価とする取得請求は2019年7月から、金銭を対価とする取得請求は2021年7月から可能になる。株式対価なら買い戻し価格は発行価格だが、金銭対価だと発行価格の1割増しになる。

つまり、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は貸出債権のうち2000億円について、金利引き上げと引き替えに弁済期限を4年後ないし6年後まで猶予したにすぎない。

さらに、この優先株は、配当可能な剰余金が計上できず、配当の支払いが出来ない場合は全額翌期以降に繰り越せる累積型になっており、なおかつ繰り越した場合の遅延利息は2018年までは年間7%でそれ以降は8%。

中計上最終損益が黒字化するのは2017年3月期からだが、本格的に黒字が計上されるようになるのは2018年3月期以降。3年分の遅延利息分も上乗せされるわけで、計画通りシャープが再建を果たす前提に立てば、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行にとっては焼け太りとも言える条件だ。

ニューマネーは連結販管費20日分

さらに、JISが引き受けるB種優先株の発行条件はA種とは比較にならないほどの好条件(シャープ側にとっては悪条件)である。

配当金額は、2018年までは発行額に対し年間7%。250億円に対し17億5000万円にもなる。発行予定日が今年6月末なので、初年度の2016年3月末を基準日とする配当金は9カ月分で13億円強だが、次年度分と中計最終年度の2018年3月末基準日分は17億5000万円ずつ。3年分合計で50億円近くになる。

シャープの2015年3月期の販管費は年間で単体が2056億円、連結で4365億円だ。250億円は単体販管費44日分、連結販管費20日分でしかない。7%もの金利を払って調達する金額が、その程度でしかないのだ。

JISから調達する250億円について、シャープは成長分野への設備投資に充当するとしているが、年間の減価償却費だけで1000億円を超え、たった250億円で最低限度の設備更新以上のことがどの程度可能なのだろうか。

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