大変革期をどう「大玉」新規事業機会にしていくか トップのマインドセットとリーダーシップが鍵
・抜本的な業務変革の探索
第3段階は、「抜本的な業務変革の探索」である。この段階まで進むと、今のやり方にAIを入れ込むという次元を超えて、AIを使って、社内の業務プロセスをゼロベースで再設計する。コールセンター業務や営業支援業務を例に取れば、単にAIで今のやり方の効率化を図るのではなく、顧客接点や営業のやり方自体も大きく変えることを検討する。当然、チャレンジも大きくなるし、物事を大きく変えることになるので、強いリーダーシップや経営判断が必要になるが、インパクトを最大化し、競争優位性を強化する可能性が開けてくる。
・大玉新規事業狙い
第3段階まで進むと、かなり「攻め」の要素が強くなるが、まだ生成AIを既存事業に入れ込むという発想にとどまっている。それを超える第4の段階は、生成AIを使って、今まで世の中になかったサービスを創り出すという「大玉新規事業狙い」になる。
大玉事業の例:インスタカートの試み
生成AIによる大玉事業の今後の方向性を想起させるのが、8月25日にナスダックへのIPO申請を発表した、アメリカのインスタカートの取り組みである。
インスタカートは、消費者向けに、スーパーへの買い物代行、配達をしてくれるサービスを提供しており、このモデル自体が、消費者、スーパーのニーズに適合し、成長している事業であるが、ここにとどまらず、生成AIを活用して、違う次元のビジネスに進もうとしている。今までのネットサービス、ECでは、消費者は、あらかじめ欲しい商品を頭に浮かべ、それを注文するものであった。一方、インスタカートは、生成AIの会話能力を生かし、ユーザーに「会話(チャット)」による相談をしてもらって、その結果、欲しいものを提案、特定していく。
例えば、ユーザーは、特定の商品を注文するのではなく、「子供の健康に良いものを作りたいが、どんなものが良いか?」と質問する。そうすると、インスタカートから、「こういうものはどうですか?」と具体的な提案があり、それにユーザーが賛同すれば、カートに必要な食材が入って注文されるという要領だ。ユーザーのアクションは、具体的な商品を自分であらかじめ考えて注文するのではなく、相談することになる。
このような会話を通じて、インスタカートは、このユーザーに子供がいること、健康に関して感度が高いことなど、従来では獲得できなかったユーザー情報を学ぶことができる。やり取りが蓄積していけば、よりユーザーのプロファイル情報、嗜好などを深く理解することができ、カスタマイズした提案をするという次元を超えた、スーパーパーソナライゼーションの領域に到達しうる。ユーザーも、会話を楽しみながら、どんどん自分の潜在ニーズを言い当ててくれるので、会話すること自体が楽しくなり、ロイヤルティも高まっていく。
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