映画「バービー」をビジネス視点で見たら凄かった 発売元マテル社の戦略はこうやって読み解く
第2の見どころはジェンダー視点である。映画を見た帰り際に「メッセージ性、強くね?」と感想を述べる男性客に遭遇したが、実際、多くのメッセージがこめられた作品だ。
今回の映画で、バービーたちが暮らす「バービーランド」は“女性優位”の世界だ。大統領も最高裁判事も、国会議員もノーベル文学賞受賞者も要職は全て女性で占められている。一方でケンたち男性キャラクターはバービーたちの引き立て役のような存在だ。
「バービーランド」と人間世界の対比
対照的に、映画の世界で描かれる人間の世界は、男性優位である。バービーランドから人間界にやってきたバービーがまず遭遇するのは路上でのセクハラ。そして工事現場も取締役会も企業のオフィスも男性で占められている様子だ。
現代のアメリカには、少なからぬ女性リーダーがいる。副大統領(カマラ・ハリス)、最高裁判事(ルース・ベーダー・ギンズバーグなど)、国会議員(ヒラリー・クリントンなど)、ノーベル文学賞受賞者(トニ・モリスンなど)などの存在を思えば、本作中の男性優位社会が現実よりも誇張され、かなり戯画化されていることは明らかだ。
加えて、バービーが当たり前のように抱いている価値観にはルッキズム(外見至上主義)やエイジズム(若さ至上主義)が色濃い。それが、人間界に来ることで徐々に変化していくのも面白い。多かれ少なかれ、ジェンダーに関心や知識がある人が見れば色々と気づくことがある。
近年のハリウッド映画において、娯楽作品にジェンダー視点を取り入れるのは、もはや当たり前になっている。アクション作品では、かつてのように守る男性と守られる女性という「性別役割分担」はほぼ消えており、女性も一緒に戦うのが当たり前になっている(例えば「トランスフォーマー」もそうだ)。
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