映画「バービー」をビジネス視点で見たら凄かった 発売元マテル社の戦略はこうやって読み解く

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今回、映画に関わったマテル社は、社会と時代が求めるものと、自社が発するイメージのギャップを見つめたのではないか。その結果、自社を痛烈に批判する表現をも是として受け入れたのではないだろうか。

ちなみに映画で描かれるマテル社取締役会は13名全員が白人男性となっているが、現実には名前と写真から推測すると11名の取締役のうち4名が女性である(https://corporate.mattel.com/executive-leadership)。映画で男性ばかりの取締役会を茶化す表現を受容できたのは、現実には3分の1以上が女性になっており、映画が描く問題を同社がすでに卒業できているためかもしれない。

こうして映画の主語をバービーからマテルに移してみると、ピンクづくしの映画からビジネスパーソンが得られるレッスンがずいぶん多いことに気づくだろう。

女らしさと男らしさの軛から人々を解放する物語

最近急に、「女性活躍」とか「ジェンダー」と言われて戸惑うビジネスパーソンは、この映画を見てほしい。そして、映画の中で男らしさ・女らしさに基づく偏見がどのように描かれているか考えてほしい。さらに、映画で描かれるマテル社の問題は、自分の勤務先とどのように似ており、どのように違うか考えてみてほしい。

最後に重要なのは、この映画は、女性を褒め称え男性を貶すものではない、ということだ。そうではなく、女性を解放することは、男性の解放にもつながる、という明確なメッセージが伝わってくる。

「ケン」という男性人形の変化と悲哀、そして解放のストーリーにも注目することで、それが読み取れるはずだ。女性が解放される時、男性もまた、これまでの型にはまった役割から解放され、自らの人生を生きることができるのである。

ピンクだらけ、女児玩具の世界を描いた映画ではあるが、実は女らしさと男らしさの軛から人々を同時に解放する物語になっている。ぜひ次の週末、ビジネスマンに本作を見てもらい、自身と勤務先の新たなポジショニングを考えるきっかけにしてほしい。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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