「バービー炎上」で気になるアメリカの原爆教育 「原爆投下は必要だった」という議論に変化も
映画『バービー』をめぐる原爆ミーム画像に日本人が怒りをあらわにしていることは、アメリカでも報じられてはいるが、実際のアメリカ人たちはどう受け止めているのだろうか。筆者がかつて住んでいた、ミシガン州の2人の現役社会科教師に今回インタビューしてわかったのは、「原爆によって戦争を終わらせることができた」というアメリカ側の正当性だけを教える教育に「変化」が訪れているということだ。
「無神経」という言葉では足りない愚劣な行為
「アメリカ人の1人として本当に恥ずかしい。日本の人々に謝罪したい。多数の市民の命を奪った原爆をジョークのネタにするなんて、何を考えているんだ。『無神経』という言葉ではとても足りない愚劣な行為に、私は激怒している。自分たちの無知さや傲慢さを世界中に晒す行為そのものだ」。
こう話すのは、中西部ミシガン州在住の高校教師、マーク・ポントニさん(67)。公立高校で「アメリカ史」や「世界史」などの授業を教えている。
そもそも、原爆や第二次世界大戦について、アメリカの公立学校の生徒たちが学ぶ機会は、どのぐらいあるのだろうか?
「ミシガン州の公立高校では『アメリカ史』は必修科目。『世界史』も合わせると、生徒たちは第二次大戦と原爆については、高校在学中に最低でも2科目を通して学ぶことになっている」とポントニさんは言う。
授業では特に「第二次大戦時のモラル」に焦点を置き、ユニークな試みを行っている。その1つが、ハリー・トルーマン大統領を「戦争犯罪裁判」にかける、というもの。原爆投下を決断した同大統領は「戦争犯罪人か否か」を問う裁判で、生徒たちが証人や裁判官、検察官、弁護士や陪審員の役を担い、実際の法廷さながらの論議を、約7日間に渡って繰り広げる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら