「バービー炎上」で気になるアメリカの原爆教育 「原爆投下は必要だった」という議論に変化も

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「戦時下のリーダーだった当時の大統領の決断に異論をはさむべきではない、とこの国ではよく語られてきた。でもはたしてそうなのか、生徒たち自身の頭で考えて欲しいから」とポントニさん。

「私個人は、罪もない市民の頭上に原爆を落とすという行為を正当化することはできないし、自国がした行為を誇りに思ったことはない」が、教室内では生徒たちが自由に議論し、自分たちなりの決定を下すプロセスを見守る役を務める。「大統領は戦犯」という判決が出る年もあれば、「無罪」と判定される年もある。

これまでに多かったのは、「広島の投下に関しては戦争を終結させる意図でトルーマンは『無罪』だが、2度目の長崎の投下に対しては『有罪』」という判決。この判決を広島の市民に伝えたら、彼らがどう受け止めるかと思うか、という点もポントニさんは生徒たちに問いかける。

このほかにもホロコースト、東京大空襲、日本軍の中国侵略などをカバーし、ネット上でアクセスできる映像や画像も積極的に使い、生徒たちが「戦時中のリーダーの決断が、その土地に住む人々に具体的にどんな影響を及ぼしたか」を考えられるように心がけているという。

「自分が無知だったことに怒りを覚える」

「どの国のリーダーも倫理的に見て正当化できない行為を行ってきた。それが戦争であり、そんな事実を分析するツールとスキルを生徒たちに習得してほしい」とポントニさん。

自らの授業でトルーマン大統領の「裁判」を行うというポントニさん(写真:ポントニさん提供)

1週間の「裁判」に参加する生徒たちはそれぞれの立場から議論を展開するために、原爆について詳細にリサーチする。授業が終了すると「今まで原爆に関して自分たちはほとんど何も教えられてこなかった。これまでの教育の杜撰さと自分が無知だったことに怒りを覚える」という感想が書かれたカードが、生徒たちから数枚は必ず届くという。

一方、ポントニさん自身が高校生だった頃に受けた歴史の授業は、それとはまったく違ったものだった。

「原爆こそが戦争を終結させた。原爆投下により、多くのアメリカ軍人の命と多くの日本人の命を救ったのがトルーマンだ」と教えられた。当時はそんな教えに疑問を抱いたとしても、一生徒がアクセスできる歴史の資料や映像はごく限られていた。

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