「バービー炎上」で気になるアメリカの原爆教育 「原爆投下は必要だった」という議論に変化も
原爆資料館の展示を見ながら、原爆の開発完成から実際の投下日までにかなりのテスト期間があることにナポントさんは注目した。日本のどの都市に何日に投下するのか、アメリカ側が吟味しつつ、核実験をアメリカの砂漠地帯で重ねていた日々だ。
「原爆の完成から実際の投下までの時間で、日本が近いうちに降伏するだろうことは十分予想できたと、今史実を調べればわかる。21万人以上の民間人を殺戮する原爆を落とす正当性などどこにもなかった」とナポントさんは結論づける。
「原爆は必要だったか」という議論はもういらない
ナポントさんは、仲間の社会科教師たちと「ヒットラーを非人道的な悪として生徒たちに教えるのであれば、原爆も非人道的な悪である、と教えてどこがいけないのだろうか?」という議論をしたことがある。
「もちろん、教師として善悪を生徒に教室で押しつけるのは避けるべきだし、あらゆる史実を客観的に生徒に提供して、彼らがそこから自ら学べるようにすべきということはわかってる。でも、原爆は必要だったか、という議論にはもういいかげん終止符を打つべき時代が来ていると思う」
ネイティブ・アメリカンの血をひくナポントさんは、幼い頃から先住民が虐殺されてきた歴史や、黒人の奴隷制の歴史の史料を図書館で片っ端から読み漁り、学校の教室で教えられることには、つねに批判精神を持ち続けてきた。
ドイツに原爆を投下せず、日本に2回投下したという史実には「アジア人に対する人種差別の側面があったことは当時の資料を細かく調べればもう明らかだ」と前述のポントニさんも断言する。
20代のナポントさんはまた、「ソーシャル・メディア・シチズンシップ」の科目を自ら立ち上げて中学校で教えている。TikTokなどのSNSを自在に使いこなすローティーンの生徒たちに、アルゴリズムによる縛りをいかにうまく突破して、ネット上で正確な情報や資料にたどり着けるか、も教えている。
「でも、どんなにネットで映像や画像を調べ尽くしても、広島を自分で実際に訪れて見て感じた経験とは比べものにならない。アメリカ人の子どもたち全員が、広島を修学旅行で訪れることが必須になってほしいと切実に願う」と語った。
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