さて、運用会社と金融機関が大いに意識している2024年に始まる新NISAだが(金融庁は単に「NISA」と呼ぶことにしたい意向らしい)、投資家側ではどう利用したらいいか。
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は同一商品に
ポイントを1つだけ挙げると、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同一の投資対象商品にすることだ。個別株投資を趣味とするような一部の投資家を除くと、成長投資枠でも、つみたて投資枠と同一の商品に投資することを強く勧めたい。
つみたて投資枠で金融庁が適格だと認める運用商品は「長期の資産形成に適した、広く分散投資されていて、複利運用が可能な、低コストな商品」である。
さて、新NISAでは、保有商品の一部を換金売りした場合に投資家の「生涯投資枠」(総額で1800万円、うち「成長投資枠」は1200万円)が復活し、両投資枠の入金ルールに従って再投資可能なので、投資対象を入れ替える余地が相当程度ある。この点については、金融庁は回転売買的な勧誘を取り締まる意向をすでに示している。
では、例えば1年から数年程度の比較的短期の運用を考える場合に、「短期投資に適した商品」はあるのだろうか。残念ながら、短期に適した商品を選ぶ能力は、プロ・アマを問わず、投資家にもセールスマンにも「ない!」のが現実だ。いつが株価の上がりやすい時期なのかといったタイミングもわからないし、どのような傾向の商品が有望なのかも、投資する「事前には」わからないのだ。
例えば、ある投資家に2年間の時間とお金があった場合、この投資家ができる最善の投資は、10年、20年といった長期の単位で行う投資にあって最善の商品に投資して、自分が投資する2年間がよい時期であることを祈るだけのことなのだ。
繰り返すが、タイミングの判断力、どの投資対象が良いかの選択力は、プロにもないのが現実なのだ。そう考えると、つみたて投資枠で適格とされない「長期の資産形成に適さない商品」は、成長投資枠で短期に投資するうえでも不適格なのだ。端的に言って、「長期でダメなものは短期でもダメ!」なのだ。
現在、成長投資枠にどの商品が適格と認められるかが運用業界で注目されているが、投資家は野次馬的興味以上の深い関心を持つ必要はない。なぜなら、つみたて投資枠で不適格な商品は、しょせんダメな商品だからである。
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