それならXBB型対応ワクチンができるまで待ってから承認されてもよかったのではないだろうか。谷口医師は推測する。
「mRNAワクチンは従来のワクチンと比べて型が変わっても簡単に製造できるとはいえ、製造できても市場に出るのは少なくとも数カ月から1年ぐらいはかかると思う。その『数カ月から1年くらい』が待てなかったのではないでしょうか」
加藤勝信厚労大臣も8月1日の記者会見で、国産コロナワクチン承認の意義をこう強調している。
「新型コロナを含めた感染症に対するワクチンを国内で開発・生産できる能力を確保することは非常に大事な観点との指摘がある」
使い物になろうがなるまいが、とりあえず「国産ワクチンができた」という結果がほしかったのではないかと疑われても致し方ない。
「『有事』の際には輸入ワクチンが使えなくなるかもしれないから、国産ワクチンを生産できるようにしておきたいという考えもあるだろうが、たとえワクチンを国産にしたとしても、エネルギーや食糧など他の輸入品が入ってこなくなれば生活はできないのだから、個人的には政府は『平和維持』に力を注いでほしい」と谷口医師は語った。
コロナ「秋接種」必要なのか?
ダイチロナにはXBB対応型の登場をひとまず待つとして、秋接種では、私たちはどうしたらいいのだろう。重症化リスクの少ない人は、もう接種しなくていいのだろうか。
「重症化リスクが高い場合は、接種したほうがいい患者さんは多い。それ以外の人は、接種は不要でしょう」と谷口医師は断言する。
今になっては、重症化リスクのない人が、持病などのある他者にうつさないことを目的に接種する必要も、特にないそうだ。その理由として、「コロナワクチンは重症化は防ぐものの、接種しても感染することがはっきりしてきたため、他者への感染を防ぐ効果がどれだけあるかは疑問だから」と谷口医師。アメリカやイギリスなど、ほとんどの国でも、今の接種対象は重症化リスクのある人のみだという。
それだけではない。8月2日、日本医師会の釜萢敏常任理事は定例会見で、重症化リスクのある人のワクチン接種について、「過去の接種で副反応が強く出た場合は慎重に」と呼びかけた。
「アナフィラキシーや薬疹を発症した人が再度ワクチンを接種すると、さらに重症化するので、控えるべきだということ」と谷口医師は説明する。他方、単なる倦怠感や発熱があった場合は、1人ひとり、かかりつけ医に相談し、検討することが必要だという。
軽症化したとはいえ新型コロナはなくなったわけではない。私たちは新型コロナと今後もどう付き合ったらいいのだろうか。谷口医師に尋ねると、「重症化リスクがなく、かつ重症化リスクがある人と接しない人は、特に気をつけることはない」という答えが返ってきた。コロナ前の日常の過ごし方で問題がないというわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら