厚労省は8月25日、全国に約5000ある定点医療機関から8月14~20日に報告された新型コロナの新規感染者数は、1つの医療機関あたり平均17.84人だったと発表した。前週(14.16人)の1.26倍で、増加傾向が続いている。
9月20日からは、現在流行の主流となっているオミクロン株派生型である「XBB」に対応したワクチンを使った秋接種が始まる。
対象者は生後6カ月以上の接種可能なすべての人となっているが、厚労省は高齢者や妊娠後期の女性、持病(慢性腎臓病、糖尿病、高血圧など)がある人といった、重症化リスクを持つ人以外には、接種を積極的には呼びかけない方針を決めている。
接種費用は、現在は国が全額負担しているが、2024年4月からは自治体などが負担するため、原則として一部自己負担になる見込み。
これについて、新型コロナが広がり始めた2020年1月末に発熱外来を設け、発熱患者やコロナ患者を診てきた谷口医院(旧太融寺町谷口医院・大阪市北区)の谷口恭院長は「個人的には重症化リスクのある人には、2024年4月以降も無料で供給してほしい」と訴えている。
国産ワクチン承認されるも使えず
さて、8月2日に国産の新型コロナワクチンとして初めて承認されたのは、第一三共(東京)が開発した「ダイチロナ」。これまで使われていたアメリカ・ファイザー製や、アメリカ・モデルナ製と同じく、ウイルスの遺伝情報の一部を使った「メッセンジャー(m)RNAワクチン」だ。
国内で行われた臨床試験でファイザーやモデルナ製のワクチンと同程度の有効性と安全性が確認され、今年1月に厚労省に承認を申請していた。冷蔵(2~8℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待されている。
日本で新型コロナのワクチン接種が始まったのは2021年2月。当時はアメリカやイギリスの企業が開発した製品に頼ってきた。購入によって巨額の費用が海外へ流れることや、危機管理の観点から、国産ワクチン開発の重要性は長く叫ばれてきた。そういう意味では、ダイチロナは待望の国産ワクチンといえるだろう。
ところが、だ。9月20日からの秋接種には、ダイチロナは使われない。これまでと同様、ファイザーかモデルナ製ワクチンが使用されるという。
それは、ダイチロナが新型コロナの流行当初の「武漢株」に対応するワクチンだからだ。谷口医師は首をかしげる。
「武漢株対応のダイチロナはワクチンとしてほとんど意味がない。まったく効かないわけではないかもしれないが、現在流行しているXBBタイプに効果があるファイザーやモデルナ製が秋接種で使われるのは自明。ダイチロナのXBBタイプが登場するまで、ダイチロナの出番はないでしょう」
第一三共は現在、XBB型対応ワクチンの開発も進めており、年内の供給開始を目指しているという。谷口医師は「mRNA型ワクチンは従来のワクチンと比べて、型が変わっても比較的簡単に製造できると考えられるため、早く開発できる可能性はあると思う」と話す。
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